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北風


 砂埃を巻き上げて、向かいから吹いてくる強い風にブルブル震えるわたし。その横でキャーキャー言いながらもぬくぬく暖かそうなのがひとりと一匹……。
 視線の先のルーミィは、もこもこな毛糸の帽子にセーター、マフラーに身を包んでるから、もう、そのままでも十分暖かそう。なのにね、腕の中にふわっふわなシロちゃんをギューッと抱きしめて、その後頭部にぷにぷにほっぺを埋めてるのよ! これって天国以外の何物でもないでしょ?
「……ねぇ、ルーミィ。シロちゃん貸して?」
「えぇぇー?」
「ちょっとだけだから!」
 しゃがみ込んで拝み倒すわたしに、シロちゃんはその大きな黒い瞳でルーミィを窺ってる。当のルーミィは、しばらく悩んでたんだけどね。
「だめらお。しおちゃんはルーミィの!」
 はっきりそう言って、シロちゃんをさらにギュギューッと抱きしめてわたしから隠してしまった。
「ルーミィしゃん……」
 シロちゃんの呟きは困った様でいて、どこか嬉しそうに聞こえて。

 はいはい、お邪魔して悪かったわね。

 北風に首を竦めながら、今日の夕飯の買い出しに急いだ。

- end -

2013-11-23

「北風」をテーマに。

ルーミィとシロちゃんは、日常を描くにはとても扱いやすいキャラですね。


屑深星夜 2013.11.20完成