拍手お礼 幻水

冬の団子


「リオウ〜! そろそろ起きないとシュウさんがお怒りだよ〜?」
「今日はおやすみぃぃぃー……」
 曇った声に首を傾げながらひょいと覗き込むと、ベッドの上にはシーツと毛布でダルマのようになったリオウがいた。確かに今朝はいつもよりも冷えた。とはいえ、太陽が出た今は少しは気温も上がってきたというのに……。
「うっわぁ〜……リオウのその姿、久しぶりだ〜」
「キャロ出て来てからはじめてするもん。当たり前〜」
 普段の服装と変わりないナナミは、ベッドの縁までやってきて呆れ顔で黒髪をクシャクシャと撫でる。
「ここより寒いキャロで育ったくせに、何でそんなに寒がりかなぁ〜?」
「ぼくだけ南の血が入ってるのかも? 陽気だし? バカだし?」
「なっにお〜? そんなのナナミちゃんだって負けてないし!」
「ナナミのは能天気って言うんだよ」
「能天気はリオウの方でしょ! あたしのは超ポジティブ!」
「そんなこと言って、よくポジティブどっかに旅立たせてサボってるくせに」
「サボってないもん! リオウのがお仕事サボってるでしょ!」
「お仕事はサボるもの〜」
 勢いを増す2人の口論を止めたのは、ガツンと落ちた軍師の拳だった。
「低レベルな姉弟喧嘩してる場合か」
 ため息と共にグイと大きな団子の首根っこを掴んだシュウは、そのままベッドから引きずり下ろす。
「行くぞ。会議室で皆が待ってる。」
「いぃーやぁーだぁー!」
「嫌でも何でも引きずって行くぞ」
「シュウの鬼ー!!」
 己を見上る鋭い視線に、軍師はチラリと一瞥して。
「何とでも言え。……とりあえずお前はもっと厚着しろ」
 もっともなことを告げ、問答無用で寝起きのリオウを連れて行ったのだった。
 遠ざかる弟の鳴き声を聞きながら、ナナミはただただ見送ることしかできなかった。

- end -

2013-11-23

「北風」をテーマに。

考えているうちに、「北風」というより「冬」という感じになりました。
寒がりだったりしても面白いよな、というお話。


屑深星夜 2013.11.20完成