拍手お礼 オリジナル

案外


 太陽がてっぺんに上り切ったお昼。
 ひなたぼっこをしているようで温かいとはいえ、今の季節は冬。風がない分体感温度は高いのだが、中庭で敷物を引いて弁当を食べるのはそれなりに寒い。サトイモの煮っ転がしを口に放り込んだシラサギは、口をモゴモゴさせながら呟く。
「アキはいいよな〜」
「え? 何がです?」
「ミーちゃんあったかそうで」
 そのルビーのような赤い瞳はアキの膝に丸くなっている使い魔、ミヨゾティ=バリニーズに注がれている。彼女は空色の瞳をチラリとシラサギに向けると、得意げに尻尾を振り、アキの腰に巻きつける。
「……悪かったな。暖かくなくて」
 低い声を更に低くし、機嫌が悪いのを隠そうとしないシラサギの使い魔、オプシディアン=カラスは、片側しかない漆黒の瞳でバリニーズを見下ろしている。その様子にアキは、慌てて持っていた皿と箸を下に置く。
「シ、シラサギさん、それは間違ってますよ! 鳥の羽は空気をよく含みますから、とても暖かいんですよ?」
「でも、さわり心地悪い気がするし。やっぱり撫でるならミーちゃんの方が……」
「あら、愛でられるべきは誰なのか、よくわかってるじゃない」
 カラスは、自慢げに見上げてくるバリニーズの視線に深く深く溜め息を吐く。
「お前たちの目は節穴……」
「わーっ!!! ディアン待った!」
 バリニーズの機嫌を損ねては、途中である昼食が気まずくなって困る。が故に、投げ捨てる勢いで皿と箸を置いたシラサギは、肩に乗っていた己の使い魔を腕の中に抱き込み、嘴を掴む。
「……あ。あったかい……」
 ほわりと感じる暖かさ。
「そうでしょう?」
 自分の言に間違いはなかったとホッと胸を撫で下ろすアキ。シラサギはそれに頷きながら、カラスの嘴から手を離してチラリと見下ろす。
「案外やるね、ディアン」
「……案外は余計だ」
 ボソリと呟く声は、彼にしてはとても優しいものだった。

- end -

2013-11-23

「北風」をテーマに。

まだあまりBL話はUPしてないからな…ということで、「白鷺物語」ネタで。


屑深星夜 2013.11.20完成