片岡 博明〔カタオカ ヒロアキ〕。
好きで好きで好きでたまらない、僕のお兄ちゃん。
お兄ちゃんが好き。
僕は、その気持ちをずっとずっと伝えてきた。
思ったことは何だって正直に口にするお兄ちゃんだから、そりゃもちろん時にはグサリと胸に刺さることもあったよ。
でも、「キモい」とか「あっち行け」って邪険にされることすら嬉しくて。その表情だって、弟である僕だから……お兄ちゃんが大好きな僕だから見せてくれるんだよ? 最高じゃない?
けど、お兄ちゃんは気づいてないんだ。
僕のこの気持ちが、弟としてだけじゃなくって、それ以上のものだってこと。
知らないでしょ?
僕がいつも、頭の中でお兄ちゃんを裸に剥いてること。
怒るお兄ちゃんを組み敷いて、その顔が恐怖に歪むことにすら興奮してるってこと。
そして、必死に抵抗してるお兄ちゃんが快楽に落ちていくのをじっくり楽しんで、喉が枯れるほど啼かせて、喘がせまくって、最後には自分から僕を求めるようにお兄ちゃんを貶めてること。
プライドの高いお兄ちゃんが、女の人には絶対見せない顔。
心のアルバムに永久保存してきたそんな表情を、何度も何度も何度も再生して、想像の中で何度も何度も何度も犯して。
夢見てるんだ。
いつかお兄ちゃんが、僕だけのものになるのを。
音を立てないように少し開いたドアの向こうに見えた、机に向かうお兄ちゃんの背中。ちょっと猫背になってるそれをしばし無言で堪能した後、バンッと勢いよく開けてやる。
「お兄ちゃん(はぁと)」
音に驚いて振り向く顔すら可愛くて。じっと見つめたまま溜め息吐くお兄ちゃんに近づく。
「……お前、入るときはノックしろっていつも言ってんだろ」
「あ、また忘れてた。ごめんね」
「悪いって思ってねぇだろ、その言い方」
「思ってるよ〜」
本当は思ってないけど、サラッとそう言ってニコリと微笑んだら、ビシッと人差し指を突き付けられる。
「それに、語尾にハートマークつけんなって何度言ったらわかんだよ! いい加減ブラコンやめろ!」
「無理」
「無理じゃねぇ」
「却下」
「お兄様に却下してんな!」
縋るみたいに掴んでしまった手を振り払われ、背中を向けられて眉尻が下がる。
駄目なものは駄目なんだ。
それだけは絶対に譲れない。
「だって、大好きなんだもん」
好きで好きで好きでたまらない、僕のお兄ちゃん。
片岡 博明。
腕に閉じ込めたその僕より少し小さな身体に、抑えきれない愛しさが込み上げてきて、力が籠る。
「…お、前! 苦しいんだよ! 離れろ! 久明〔ヒサアキ〕!」
「嫌だよ〜」
手を叩かれても、髪の毛を引っ張られても、その痛みにすら幸せを感じてるんだから、我ながらどうしようもない。
この気持ちはきっと一生変わらない。
自分から手離すことなんて、絶対にできやしない。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
気づかれないように後頭部に唇でこっそり触れる。
叶わないだろう夢を、ずっと見続けながら。
- end -
2015-9-7
るぴ様(pixiv)の「お兄ちゃんが(好きすぎて)辛い」のキャラクターをお借りして書かせていただきました!!
事の発端は、ツイッターにて。うちの子1日好きにしていいよ…的なタグに反応したことがきっかけです。
うちの子描いていただくなら、そりゃ私も書くに決まってるでしょ!
…と、素敵作品読ませていただいた勢いでダーッと楽しんで書かせていただきました♪
今後の2人も気になるところ。
楽しみにしておりますー!!
屑深星夜 2015.9.6完成