「トラップ! 起きないとバイトに遅刻するよ!」
わたしがそう言って、気持ちよさそうに眠っているトラップに声をかけると、眠そうに目を擦った瞬間、ぱちりと瞼が開いた。
「……やべぇっ! なんでもっと早く起こさなかったんだよ!」
急いで身体を起こしたトラップはわたしをにらむの。
もぉ〜…起きなかった自分が悪いんじゃない!
にらまなくったっていいのに!
「わたしは何度も起こしました!」
「……くそぉっ!!」
言われる筋合いのない文句に、舌を出してやったら、すっごい悔しそうな顔した。
でも、すぐにバタバタと着替えの準備などし始めたから、わたしはそれを横目に部屋を後にした。
「トラップ、起きましたか?」
下へ降りて来たら、ズズズっとコーヒーを飲むキットンに聞かれ、苦笑する。
「うん、今ね」
自分のコップに注いでおいた暖かいミルクを一口飲んだ。
「8時からだから、遅くとも30分前には起こせって自分で言っといて、全然起きないんだもん」
わたしはそう言いながらコップを置き、テーブルにあったパンに、用意してあったサラダとハムを挟んだ。
寝坊したトラップのために、簡単にサンドイッチを作ってみたの。
せめて主食くらいはね〜。
朝ご飯を食べないと、身体も動かないだろうし。
すると、バタバタと上から大きな足音をたててトラップが降りてきた。
「顔くらいは洗って行けよ」
「わあってるよ!」
クスクスと笑って声をかけるクレイに怒鳴ったトラップ。
わたしは、そんな彼にひょいとさっき作ったサンドイッチを差し出した。
「はい、トラップ」
「サンキュ!」
パッとそれを受け取ったトラップは、駆け足で外へ出て行った。
「んもー…あわただしいったら」
クスクスと笑いながら、わたしは自分の席について、フォークでサラダをつついた。
「ぱーるぅ、ルーミィおかわい!」
「はいはい。またサンドイッチにする?」
「うん!」
満面の笑みでうなずく彼女に笑いかけながら、わたしはまたパンを手に取った。
そのすぐ後に、ノルがバイトに行ったの。
彼はトラップとは違って朝早く起きてたから、準備も万端。
しっかり朝食も食べて行ったわ。
キットンも、コーヒーを飲み終わった後、薬草を探しに行くんだと出かけていったんだ。
最後はクレイ。
彼のバイトは9時からだから、一番遅くに出かけるの。
「それじゃあ、留守番よろしくな」
玄関に立ってそう言ったクレイに、微笑む。
「うん、みんな気をつけて頑張って来てね」
「がんばってきえね!」
「わんデシ!」
ルーミィとシロちゃんもニコニコとそう言うの。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
笑顔を残して背を向けるクレイに、わたしたちはしばらくの間、手を振ってた。
頑張ってきてね!
そんな思いを込めて。
fin
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