「オルバ――っ!!!」
「おぉ?」
 聞き覚えのある声に顔を上げると、デュアンが宿の入り口から手を振っていた。
「デュアンじゃねーかぁ! いつから居たんだ―!?」
「1週間くらい前だよ――っ!!」
 懐かしい…なんて思っちまったが、実際それほど長い間離れてたわけじゃねぇ。
 それなのにそう感じるってーことは、離れてる間に起こったことが原因だろうな。
 走っておれの方に来たデュアンは、緑の瞳を細めて笑う。
「久しぶり、オルバ!」
「あぁ、元気にやってたか?」
 おれは、初めて会ったときのイメージとはすっかり変わったこいつの背を叩いた。
「色々あったけど、とりあえずは元気だったかな」
 お?
 それなりに力をこめて叩いたのに、ぐらつかねぇな。
 体力、筋力がついてきたな。
 おれがそんなことを思ってる間に、こっちの腕を掴んでぐいぐい引っ張りやがる。
「もう、話したいことがいっぱいだよ!!」
「わかったわかった! 聞いてやるから部屋に入らせろ」
 手で制して落ち着かせた後、デュアンの泊まっている部屋へと並んで歩いて行った。


 部屋に着いたとたん、デュアンの話が始まった。
 おれと別れた後のバハルムでの暮らしから、金の森での闇魔との戦い、そして、ロンザの首都へ行き、王と会った話…。
 ベッドに背を預け、床に座ってそれらを聞いた。
 こっちが闇魔と戦ってたとき、デュアンの方もとは……驚いた。
「そっちも色々あったんだな。そりゃ、お前が変わるのもうなずける」
「ホント!? おれ、変わった?」
 期待した瞳でこっちを見るデュアンに、にやりと笑って見せる。
「あぁ、ますます女顔になった」
「オルバっ!!」
「ははは! 嘘だよ嘘! 男らしくなった」
 目を据わらせて、腕を振り上げるこいつに、今度は声を上げて笑った。
 しばらく頬を膨らませていたデュアン。
 ……こういう姿を見ると、変わってねぇなぁと思う。
 そういやぁ、魔女の森でこいつと始めて出会ったとき、迷子になってたんだっけな。
 女みてぇに細っこくて、ファイターなんて嘘だろ? ってな身体つき。
 足手まといにしかならねぇと思ってたこいつが、こんな風に成長するとはな。
 色々考えてたら笑いが止まらなくなっちまって、片手で口を押さえてたら、デュアンに思い出したように聞かれた。
「あ、オルバは? おれがいない間どうしてたの?」
「んー…話せば長くなるんだがなぁ……」
 さっきまで気持ちよく笑ってたってのに、今までの出来事を思い出したとたん苦笑に変わった。
 闇魔のこともあるからな。
 話してやってもいいんだが、全部となるとおれの過去のことまで話さなきゃなんねぇしなぁ…。
「…ま、おいおい話してやるよ」
 半分ごまかすように肩をすくめて見せると、少し残念そうな顔をする。
 今までもあんまりおれのことは話してなかったしな。
 ……ま、いつかは話してやってもいいか。
 おれは、そんなことを思いながらくすりと笑う。
「とにかく、お互い無事に会えてよかったな」
「そうだね」
 にこりと笑顔を向けてくるこいつに、おれは右手を差し出す。
「またよろしくな、相棒」
「うんっ!」
 デュアンは嬉しそうにその手をギュッと握った。




     fin







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