日もとっぷり暮れた、ある村でのできごとである。


 クエスト途中で立ち寄った村で、パステルは……また、迷っていた。
しかも、今回は1人ではない。
 手を繋ぐ先には、まだまだ幼いエルフの子ども、ルーミィがいた。
「ルーミィ、ごめんね。怖くない?」
 焦った様子でそう聞くパステルとは反対に、ルーミィは安心顔。
 パステルの手をギュッと握って微笑んだ。
「だいじょうぶらお! だってぱーるぅがいうもん!」
「ルーミィ…」
 繋いだ手の暖かさが、パステルの心を落ち着ける。
 むやみに動いても、自力で宿にはつけないことが経験からわかっていたパステルは、ルーミィと一緒に道の脇に座り、迎えを待つことにした。

 頭上は満天の星空。
 2人で空を見上げ、闇夜に浮かぶ小さな光たちを眺めて、静かな時を過ごした。



「パステルおねーしゃん! ルーミィしゃーん!」
 遠くから聞こえる声に顔を上げると、小さな白い影と、すらっとした長身の影が並んで近づいてきていた。
「大丈夫デシか!?」
「だいじょうぶだお! ぱーるぅがずーっと、て、つないでてくれたんら!」
「そうデシか。それならよかったデシ」
 ニコニコと話すルーミィの様子に、シロも自然と笑顔になる。
 パステルはルーミィと手を繋いだまま、そんな2人の会話を聞いていた。
「おめぇは…毎度毎度、よくこうも迷えるもんだな。こっちが呆れるぜ…」
 そう呆れ顔で言うトラップに、普段のパステルなら、カッとなって言い返すか…小さくなって謝るくらいのことしかできなかっただろう。
 しかし、今日の彼女は違った。
「探しに来てくれてありがとう!」
 嬉しそうにそう言うと、空いている方の手でギュッとトラップの手を握った。
「なっ…!?」
「手を繋ぐって安心できるんだね」
 目を丸くして自分を見つめる彼に、ふふふっと笑う。
「あんしんできるんらね!」
「ねー、ルーミィ」
「ねー、ぱーるぅ!」
 手を繋いだまま笑いあうパステルとルーミィの様子に、トラップはプイッとそっぽを向く。
 暗くてよくは見えなかったが、その顔は少し赤くなっているようだった。
「……っ、行くぞっ!」
「うん!」
「うん!」
「はいデシ!」
 トラップの言葉にうなずいた2人と1匹。
 彼らは、そのまま横1列に並んで、夜道を仲良く歩いて行った。




     fin







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