「ルーミィ?」
「寝ちゃったみたいだな」
 クレイたちの部屋にみんなが集まって、今度行くクエストの話をしてたときのこと。
夕飯を食べておなかいっぱいになったからか、ルーミィはいつの間にか眠ってしまっていた。
 このままでは風邪をひくかもしれない、と思ったのか、パステルは、床の上でゴロンと寝転ぶルーミィを抱きかかえようとした。
 それを止めたのはクレイだ。
「おれが運ぶよ。パステルはここにいて」
「クレイ、ありがと」
 パステルの笑顔に微笑を返しながら、クレイがルーミィを軽々と抱えると、
「ボクも一緒に行くデシ!」
今までルーミィの隣で丸くなっていたシロが、起き上がってクレイを見上げていた。
「ルーミィが1人で寂しくないように、見ててくれるのか?」
「はいデシ!」
「ありがとな」
 互いに笑みを交わした2人は、ルーミィを起こさないようにゆっくりと、パステルの部屋へと歩いていった。



 ベッドにルーミィを寝かせた後、クレイは元の部屋へと戻ったが、シロは一緒にいるという言葉どおり、眠るルーミィの隣にいた。
 彼の黒い瞳は、シーツにくるまって丸くなっているルーミィに向けられている。
 シルバーブロンドの髪を、時々自分の息で動かしている彼女は、ふわふわのほっペを赤くして、気持ちよさそうに寝ていた。
「ぱーるぅ…」
 ゆったりと寝返りをうちながら、ルーミィの口から零れた言葉。
それを聞いたシロは、今彼女がどんな夢を見ているのか、とても気になった。
 パステルに遊んでもらっているところか。
 本を読んでもらってるところか。
 それとも、ごはんを一緒に食べてるところか。
 はたまた、みんなで冒険してるところか…。
 考えているうちに楽しくなってきたシロは、自然、ニコニコと笑っていた。
「しおちゃん…」
「はいデシ?」
 突然自分の名前を呼ばれ、思わず返事をしてしまうシロ。
 ルーミィは寝ているとわかっていたはずなのに、答えてしまったことが少し恥ずかしくて顔を背けた。
 その時、
「…だーいすきだお……」
聞こえてきたその言葉に、ドキッと心臓が高鳴った。
 急いでルーミィを見ると、彼女はとろけてしまいそうなほど柔らかく微笑んでいた。

―― だいすき

 普段の何気ない会話の中でも、ルーミィがよく使う言葉だ。
 それを聞くと、いつもとてもうれしくなる。
 しかし、夢の中で言ってくれたその言葉は、いつもより、もっともっとうれしく感じられた。
 気持ち顔を赤く染めたシロは、自分の今の気持ちをルーミィに伝えようと、柔らかい彼女の頬をペロッと舐めた。
「ボクも、大好きデシ!」
 その言葉が夢の中まで届いたのだろうか。
ルーミィの顔が、一段と明るくうれしそうに笑みを刻んだ。
 それを確認したシロは、ルーミィの隣にぴったりと寄り添って丸くなった。



 その夜、部屋に戻ったパステルは…いつもよりずっと幸せそうな寝顔のルーミィと、その腕にしっかりと抱えられて眠るシロ見て、顔をほころばせたそうだ。




     fin







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