青い空と白い雲





 ♪ おっそらに〜 あおいえのぐを〜 
   いっぱいいっぱ〜い ひろげたら〜
   いっろんな〜 いろのあおいろ〜
   つくってつっく〜て ぬるんだよ〜

   まいにち〜ちが〜う そら〜の〜いろ
   きょ〜うは ちょっとみず〜いろ〜
  
   し〜ろい えの〜ぐを〜
   いっぱいいっぱいいっぱいいっぱい だ〜し〜て〜
   もっくもっくもっくもっく お〜おき〜なくもを
   でんでんでんっ! っとかくんだよ〜  ♪



「今日のお空の歌、でっきあっがり〜♪」
「シャギャ―――!」
 満足そうにそう言ったアースは、ライクを胸に抱えたまま、コロンと地面に寝転がった。


 アースたちは、リーンの町から少し離れた丘に来ていた。
 そこには1本の大きな木が立っていて、心地よい木陰をつくっている。
 アースは、その幹に体重を預けて、季節ごとに違う風景に溶け込むリーンの町を見るのが好きだった。
でも、何より好きなのは、丘の上で寝転んだとき、視界いっぱいに広がる空を見ることだった。


 寝転んだ彼の視界に、木の緑と空の青、そして雲の白が広がる。
「空はひとつしかないのに、今まで一度もおんなじ姿を見たことないね」
「ヴミャ〜!」
「今日の空だって、時間がたつとどんどん変わるし……」
 そこでふと静かになるアースの顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「……やっぱり空っておもしろいね、ライク♪」
「シャギャー!」
 空には暑さで歪む太陽が浮かび、その光に直接あたっていないはずのアースの額には汗がにじんでいる。
「う〜ん……やっぱり、夏は暑いね! 水筒持ってくればよかった〜」
 白い上着で汗をぬぐった彼は、目を細めながら今日の空をじっくりと見る。
「もくもくおっきくて白い雲が見れるのは夏だけ……」
「ギャウ?」
 首を傾げるライクの方にちらっと視線を向けた後、再び空を見上げたアースは、
「……今年はあと何回、この雲が見れるかな?」
と言って、口を閉じてしまった。
 その時、サァ…っと風が通り抜ける。
 木々がざわめき、葉の間から漏れる光がゆらゆらと揺れる。
 それは、アースの金色の髪を撫ぜ、一時の涼しさを与えた。
 風が去り、再び辺りに暑さが広がったその時、
「………20回!!」
急にその場に起き上がって、アースは元気よくそう叫んだ。
「ヴミャ〜?」
「ボク、あと20回はこの雲が見れると思う!」
 不思議そうに自分を見つめるライクに、彼はそう言ってにっこりと微笑んだ。

「夏の間の楽しみ、またひとつみーつけた♪」



 ♪ な〜つの〜そら しろ〜い〜くも 
   おっおきっなもっくもっく くも〜が〜
   あっとなんかい みっれる〜かな〜
   あっしたっの たっのしっみ でっきちゃた〜  ♪



 さっきとは別の歌を歌いながら、丘から帰るアースの姿は、暑さも吹き飛ばすような元気のよさだった。





   fin







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