眩しすぎる太陽
「…あっちぃ――っ!」
あまりの暑さに、思わず足を止め、首からかけていたタオルで顔をぬぐった。
見あげれば、眩しすぎて直視できない太陽が、何にも邪魔されることなく空にあった。
強すぎるその光が、じりじりと肌を焼き、ピリピリしてやがる。
耳に入るセミの声が、さらに不快感をあおる。
早いところバイトを終わらせて、帰りてぇな。
そう思ったおれは、早足で慣れたシルバーリーブの道を歩いた。
夕方になっても、昼間の暑さを引きずって、まだまだ気温は高いままだった。
外を走り回るようなバイト、選ぶんじゃなかったぜ…。
そう思いながらみすず旅館の入口を開けると、ガリガリガリ、と何かを削る音が聞こえてきた。
「あ、トラップおかえり!」
パステルの笑顔に迎えられたそこには、バイトを終えたクレイたちの姿もあった。
「おめぇらも今帰ってきたのか?」
「あぁ、少し前にな」
さすがのクレイも暑さにバテたのか、笑い顔がぎこちなかった。
「ぱーるぅ! とけちゃうおう!」
奥のほうから、ルーミィの声が聞こえてきた。
「もうちょっとだけ待ってて〜」
「はやくぅ!!」
いつの間にかガリガリという音がやみ、ルーミィたちの催促の声に圧されながら、パステルが入口付近にいたままのおれのところにやってきた。
「バイトお疲れ様。はい、これ」
そう言って笑顔で差し出されたのは、赤いイチゴのシロップのかかったかき氷だった。
「……かき氷か」
「冷たくておいしいよ!」
パステルの手から受け取ったおれは、スプーンを持って一口食べた。
水分をこまめに取っていたはずだったが、やっぱり足りなかったみてぇだ。
かき氷がいつもよりおいしく感じて、次々と口に運んだ。
「あ、そんなに急いで食べると……」
その言葉とほぼ同時に、おれはこめかみを押さえて目を細めていた。
「…頭がキーンってなるよ、って言おうと思ったのに」
「遅ぇよ!」
おれは、思わずスプーンを握っていた方の手で、パステルの頭を小突いていた。
「いったーい! もうっ…言う前に食べたのはトラップじゃない〜」
あいつは、大袈裟にそう言うと、昼間の太陽と同じくらい眩しい笑顔でそう言った。
おいおい、それは、反則だろ?
何も言えなくなっちまうじゃねぇか。
そう思っちまったのは、もちろん、こいつには内緒だけどな。
fin
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