12月23日






「おら、ルーミィ。サンタからカードが来てるぞ」
 配達のバイトから帰ってきたトラップが、ルーミィにそう言ったのは、12月23日のこと。
 油絵のタッチで描かれたイラストのカードを小さな手に持たせた後、さっさと自分の部屋へと行ってしまった。
「ぱーるぅ! さんたさんからおへんじがきたおう!」
「ちゃんとルーミィのお手紙届いたのね」
 とっても優しい笑い顔のサンタのカードを見せるルーミィの顔は、ホントにうれしそう。
 こっちまで自然に顔がほころんじゃう。
「なんて書いてあったの?」
「えとねー…ルーミィちゃん、が、いいこ、に、して、いたあ、あした、の、ように、ぷえぜんとを、とど、けます……」
 なんとか自分で読めたんだけど、切れ切れだから意味がわかってないんだと思う。
助けを求めるみたいに、手紙とわたしを交互に見る。
 わたしがもう一度手紙を読んであげようかと思ったとき、ルーミィの隣に座ってたシロちゃんが口を開いた。
「ルーミィしゃんがいい子にしてたら、プレゼントを届けてくれるって書いてあるデシよ!」
「ほんと? しおちゃん」
 喜びたいけど、まだ不安なのね。
 確かめるためにそう聞くルーミィに、シロちゃんはしっかりうなずいた。
「本当デシ!」
「ルーミィいいこだお! きてくえうよね!」
「はいデシ!」
 シロちゃんをギュッと抱きしめたルーミィは、キャーキャー声を上げて部屋の中を歩き回る。
 その姿がもう、可愛くて可愛くてたまらないのよね!
「よかったわね、ルーミィ」
 心からそう言ったわ。
 ふと彼女たちから視線を外して、部屋の入口を見るとそこにクレイが立ってたの。
 手招きして呼ぶものだから、何かな? と思ってそっちへ行く。
「サンタからの手紙が届いたのか?」
「うん。そうよ」
 クレイのその言葉で、何で呼ばれたかに気付いたわたしは、静かに部屋のドアを閉めた。
 そして、部屋の中から聞こえる興奮した声を背に、小さな声で言う。
「クレイからだってばれてないから大丈夫よ」
「……それならいいけど」
 実はあのカード、クレイが書いたものなのよね。



 クリスマスの丁度1ヶ月前。
 ルーミィがサンタさんへ手紙を書いたの。
 ブルーの封筒に入れたそれをもらったわたしは、ポストに入れておくって言っておいて、ルーミィとシロちゃんが眠った後にみんなで中身を見たのよね。
 入ってた白い紙に何が描かれてたかっていうと、真っ赤なクレヨンで書かれた『さんたさんへ』の文字と、色とりどりのお菓子。
そして、ルーミィも含めた、わたしたち6人と1匹の笑顔。


 最初、どういう意味なのかな? って悩んだのよ。
 お菓子はプレゼントとして用意できるけど、わたしたちの笑い顔に、一体何を求めてるのか…想像できなかったから。
 でも、よく考えたら…いつも通りでいいのかな、って思えたの。
 わたしたちが一緒にいて、楽しく笑って過ごしてるだけで。



「プレゼントの準備はできてる? パステル」
「もう買って、ノルのいる納屋に置いてもらってる」
 それを聞いてひとつうなずいたクレイは、その鳶色の瞳をわたしに向ける。
「こっちも今日、納屋に炭をおこせるようにしてきたよ」
「ありがと!」
 実は、明日の夜、ルーミィが眠った後、みんなで納屋に移動して寝むろうってことにしたの。
 どうしてかって…お菓子だけじゃなくって、“わたしたち”もプレゼントしたいじゃない?
 だから、起きたときにわたしたちみんなが一緒に眠ってたら喜ぶかなって思って。
「クリスマスの朝が楽しみね!」
「そうだね」
 わたしたちは、まだ部屋の中ではしゃいでいるルーミィとシロちゃんの声を聞きながら、2日後に控えたその朝を想像して微笑んだ。







 クリスマスは、もうすぐ。




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