月の光も木々に遮られて届かないような森の中、パチパチと燃える暖かな火を囲む影があった。
それは、豪快に横になっていびきをかいて眠るオルバに、雪豹のクノックにもたれるようにして丸くなって眠っているアニエス、そして、大きなリュックの横に膝を抱えて座っているデュアンだった。
夕飯を食べ終わり、それぞれの時間を過ごしているデュアンたちは、とくに多くの言葉もなく、ただ、真ん中に燃える炎をみつめていた。
おれがオルバたちと一緒に旅するようになって…1年になるんだよな。
デュアンは、ちらとオルバとアニエスを見た。
彼がオルバたちと出会ったのは、魔女の森だ。突然、野営地からいなくなった、フロル国の部隊を探して、知らずに入り込んだ森がそこだった。
あそこでオルバに出会わなかったら、どうなってたんだろう? 部隊に戻ってたのかな? それとも……?
そこまで考えて、デュアンは苦笑する。なぜなら、オルバとアニエスに会っていない自分を想像することができなかったからだった。
2人に会う前は、今の自分を思い浮かべることもできなかったのにな。
くすっと笑って、再び視線を炎に戻す。
いつか、オルバたちと別れるときがきっと来るんだよね。でも、明日も明後日も…10年後の今日だって、一緒にいたりするかもしれない。
そうなっても、きっとみんな変わらないんだろうな。
新しい薪を火にくべながら、思わずこみ上げてくる笑い声を抑えられなくなる。その音に、ピクリと耳を動かして自分に視線を向けて来るクノックに、デュアンはごめんと謝った。それを聞いたクノックは、自分の主人が寒くないようにできる限り体を丸めたあと、静かに目を閉じた。
デュアンは、再び仲間の様子を確認する。そして、こう思った。
10年後のことはわからない。でも、一緒にいられたら楽しいよね。
これからも、よろしく。オルバ、アニエス、クノック。
炎が揺らめき、暗い森の中に明るく照らす。
デュアンは、その後しばらくの間、それを見つめ続けていた。
- end -
2013-11-23
「黒の書」の05'年賀もの。
デュアン・サーク作品。
屑深星夜 2004.12.31完成