こっそりと家を抜け出して集まった街の広場には、新年を祝う空気が漏れ出している。
『子どもは早く寝るように』と言われても夜中まで起きていられる年齢にもなっているし、周囲がそんな状態では眠れるはずもない。
とは言え、夜中に家を抜け出した理由は、大人たちのように夜中まで騒いで新年を祝いたいというものではなく、全く別のものなのだが。
今日集まったのは、1週間ほど前にクレイが読んだある本が原因だ。
明日に別れを控えた幼馴染3人が、こっそり家を抜け出したその夜に輪になって夜空に願う。
ギュッと手を握って祈ることしばらく。丁度0時になったとき、キラリと流れる星ひとつ。
もちろん、別れをなかったことにはできなかった。けれど「また会える」という願い事が1年後に実現したのだった。
本と同じように別れが迫っているわけではない。それでも『幼馴染3人』というキーワードがトラップとマリーナの好奇心を煽ったのだった。
もちろん、今日でなくても試す日はいつでもあった。けれども、新しい年の来る今日であれば、無礼講と騒ぐ大人たちの目を盗んで抜け出しやすいだろうという結果であった。
星が見えやすいように家々の明かりが届かない場所を探し、3人で夜空を見上げる。
時刻は5分前。
「そろそろいいんじゃないかな」
闇に慣れてきた目とはいえ、なんとか時計の針を確認したクレイの言葉に、マリーナが己の胸に手を当てる。
「あー…緊張する…」
「う、うん」
「んな緊張すんなって。運試し運試し!」
「でも〜…」
流れ星が流れなかったらどうしようと思ってしまうクレイ、マリーナとは対照的に、ただこの状況を楽しんでいるらしいトラップは、肩を竦めた後で2人に向かって手を差し出す。
「おら」
2人が頷いて手を握ったことで、小さな輪ができる。
「いいか。じゃあせーので願うぞ」
「「うん」」
本と同じくギュッと互いの手を握りしめ、願うこと暫く。
そろそろ0時になるかという頃に、顔を上げて見上げた闇に尾を引く小さな光がひとつ。
「「「あ」」」
ずっとずっと友だちでいられますように。
その願いは、別々の道を歩み出した今も……変わることなく続いている。
- end -
2015-1-1
15'年賀もの。
新年をひっかけてはいますが、本題は別のネタで…。
屑深星夜 2014.12.31完成