鮮やかに

鮮やかに


 乾いた風が頬を撫でる砂漠の中の砦にて。
 皇妃将軍と呼ばれる凛とした女性の前に立つ少年は、空と同じく澄んだ瞳を彼女に向けていた。

 少し前に顔を見せた時には、どこか俯いて…迷っている様子であったのに。
 真っ直ぐに己を見つめる彼にはその欠片は見当たらなかった。
「行くのですね」
「…はい」
 力強く頷く少年に、アストリッドは目を細める。
 彼に迷いが見えるようなら、何か言葉をかけようと思っていたが、既に腹の据わっている者には何を言う必要もない。
 そう考えた彼女は、ただ、一言だけ伝えるために桜色の唇を開く。

「あなたの未来に幸せが待っていますように…願っていますよ」

「ありがとうございます!」

 花々が咲き誇るように。それはそれは鮮やかに色づく…もの。


 森羅宮に戻った今もきっと。その笑顔が、この澄み切った空の下で花開いていると信じて。

「…今、幸せですか?」

『 は い ! 』

 元気のよい返事が耳に届いたような……気がした。

- end -

2013-11-23

紡時1周年おめでとう!

見ているだけでなく私も何かお祝いを…と思って書いてみたものですが…。
30分クオリティではこれが限界でした。

皆様の未来にも、幸せが待っていますように。
願いを込めて。


屑深星夜 2013.2.9完成