ぬくもり

ぬくもり


「ゆ、勇者様!」
「な…なんだよ、ククリ……」
 背後から急に呼び止められたニケは、照れくさいのか、顔だけちらっとククリを見る。
「あ、あのね、ククリね……」
「あ、あぁ……」
 そのままもじもじと黙り込んでしまうククリの様子に耐えられなくなったニケは、視線を前に戻した。


 そんな2人の様子を、少しだけ離れたところで見ている影が2つ。
「あの2人…何をしてるんじゃ?」
 犬……ではなく、総裁がニケ達に視線を向けたままルンルンに聞く。
「野暮なこと聞かないの! 見守ってあげるのが一番よ」
 声までは聞こえないが、なんとなく2人の様子から状況がわかったルンルンは、くすりと笑ってそう言うのだった。その時、
「あの〜……なにかにおってきませんか?」
突然、ポンッと現れたギップルがルンルンに話しかけた。
 一瞬驚いたルンルンだったが、今ここでニケとククリの邪魔をされては2人が可愛そう…。そう思った彼女は、
「こないこない!! 気にしないのよ」
こう言ってギップルの視線を遮るように立った。
 そして、頭をフル回転させてなんとかいい案を絞り出した。
「あ、そうだ! 総裁、お茶にでもしませんか?」
「おぉ、そうじゃな」
 そう。少しでも邪魔するのを遅くするために、とりあえずこの場からギップルを離す作戦にしたのだ。
「ギップルも一緒に来なさいな。ごちそうしてあげるわよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
 思ったより楽に誘導できたルンルンは、心の中でククリを応援しつつ、総裁とギップルを引き連れながらその場を後にするのだった。


 側でそんなことがあったことを知らない彼らは、相変わらずその場でもじもじしていた。いいかげん、居心地が悪くなってきたニケが何か言おうと思ったその時、
「あ、あのね……」
ククリが再び口を開いた。
「な、なんだよ、ククリ」
「ククリね、勇者様が大好きだよ」
 耳に入ってきたその言葉。かぁっと赤くなる自分の頬。
 その後、全くククリに視線を向けられないニケは、背後に少しだけぬくもりが近づいてくるのを感じていた。

- end -

2013-11-23

Little Star」のめぐ様と絵茶した折のイラストから生まれた作品です。

めぐ様の勇者とククリが可愛くて可愛くてたまりませんでした!

どうもありがとうございました〜!

その時のイラストはこちらです〜。


屑深星夜 2005.6.4完成