「すずよ〜! いる〜?」
 アヒル池にたどり着いたぶたろうは、そう声をかけますが返事はありませんでした。


 このアヒル池はこじんまりとした小さな池ですが、水草や蓮などの植物がたくさんあり、生き物には暮らしやすい環境です。
 魚や昆虫などが豊富なので、牧場で暮らしているアヒルたちだけでなく外からいろいろな鳥たちがやってくる場所でもあります。
 この池を住処にしている生き物の中にカエルもいます。
 牧場の敷地内にたくさんいるカエルの中でもっともおしゃべりでウワサ好きなカエルがかえるんです。
 すずよ自身、とってもおしゃべりなので、この2人は大の仲良し。
いつもうるさいくらいおしゃべりを楽しんでいるのでした。


「すずよ〜?」
 もう一度、そう声をかけると、草むらの向こうから小さな影がちょんちょんと駆け寄って来ました。
「あ、すずよ」
「ぶたろー。どーしたのヨ?」
 片羽を挙げてそう聞いてくるすずよに、笑ってぶたろうが答えます。
「すずよに聞きたいことがあってさ」
「あ。今朝のショウヤ手紙のことでしょ」
「あたり」
 2人が顔を突き合わせて楽しそうにそう会話しているのを聞いて、
「なになになに? ショウヤの手紙って! アタシにも教えるんだわ!」
と、声を張り上げて近寄ってくるカエルがいました。
 彼女がかえるんです。
「あのね、もらって嬉しいものをリサーチしろって言われたんだけど……2人のもらって嬉しいものってなに?」
 すずよとかえるんは、顔を見合わせるとにやりと笑って声を合わせて言います。
『おしゃべりのネタ!』
「おしゃべりのネタ…ね」
 どこからともなくノートを取り出してメモするぶたろうに、2人が話します。
「ネタがあればずっとしゃべってられるんだわ」
「そうそう! ネタがあれば楽しくおしゃべりできるのヨ」
「ネタ以上にもらって嬉しいものはないんだわ〜」
「ネタ以上にもらって嬉しいもんはないのヨ」
 声を合わせるようにそう言う2人の声があまりにもうるさくて、ぶたろうは思わず耳をふさぎました。
 それを見つけたすずよとかえるんがキランと目を光らせます。
「耳をふさぐのはなしだわ」
「なしだヨ」
「うわっ!」
 小さい体の2人にべりっと耳に当てた手を引き剥がされてびっくりするぶたろうです。
 そこに畳み掛けるように質問が飛びます。
「ねぇねぇ、ぶたろう! 今日はにわとしさんはどうしてるんだわ?」
「え、あ……多分、いつもどおりなんだかんだと叫んでるんじゃないかな……」
「叫んで……」
 かえるんは宙をあおぐとぽっと頬を赤らめます。
「あぁ……にわとしさんはきっと、今日もかっこよく声を張り上げてるんだわ〜」
 そうです。
 実は彼女はにわとしが大好きなんです。
「よぉし、アタシもがんばるだわ―――――っ!!!」
 思わずすずよも耳をふさぐほどの声でそう言ったかと思うと、かえるんは元気よくゲロゲロゲロと鳴き始めました。
「あちゃー……はじまっちゃったヨ」
「だね」
 お互いに耳元で話さないと聞こえないほど大きな声に苦笑しながら、ぶたろうとすずよが話しています。
「こうなるとしばらくはおしゃべりできないからなぁ……すず、ちょっとネタを探しに行って来るヨ」
「ぼくも、最後にアサカに聞きに行こうと思う」
「そ。じゃ、頑張るのヨ〜♪」
 一足先に空に飛び立ったすずよを見送り、ぶたろうもかえるんの声が響きまくっているアヒル池を後にしました。








 アサカのところに行きましょうか。


 → アサカ








 参考 『明解!キャラクター紹介☆』