「はぁ……。やっぱり気が進まないなぁ……」
 ため息をつきながらもウマ小屋へと足を進めるぶたろうの前の方に、
小さいけれど見覚えのある影が見えてきました。
「あ、あれ……うさみだ!」
 急に元気になったぶたろうは、急いでその影の方へ進んでいきました。


「うさ……っ」
 うさみに声をかけようとしたぶたろうは、隣にあった影を見て、思わず立ち止まりました。
 そこには、きれいに筋肉のついた身体にすらりと伸びた鼻筋……人間から見ても、イケメンと言われればイケメンに見えないこともない、一匹のウマがいました。
「………」
 何も言えずに立ち止まってしまったぶたろうに先に気づいたのは、うまやの方でした。
「おや、ぶたろう君じゃないか。どうしたんだい? こんなところで」
「え? ぶたろう?」
 うまやの言葉にうさみがぶたろうの方を振り向きました。
それを見てぶたろうが再び2人に向かって歩き出します。
「あのね、ちょっと聞きたいことがあったから来たんだ」
「聞きたいことかい?」
「また、ショウヤのやっかいごと?」
 ちょっと嫌そうな顔をするうさみでしたが、隣にうまやがいるからでしょうか。
すぐに笑顔をつくってうまやの方を見つめます。
「う…うん。そうだよ」
 その様子に傷ついた顔をするぶたろうでしたが、めげずに続けます。
「あのね、ショウヤからもらって嬉しいものを調査してほしいって頼まれたんだ。2人の欲しいものってなあに?」
「僕がもらって嬉しいものでいいのかな?」
「う、うん」
 考えるそぶりも見せず、うまやが言います。
「僕がもらって嬉しいものは、僕を見つめる女の子たちの瞳…かな?」
「……え?」
「僕のような全てが出来上がった者に見とれない女の子はいないよ」
 さらりとそう言ったうまやは、優雅な動作つきで、うさみに目線を送ります。
「けれど、その熱のこもった視線がなければ、僕は、自分の魅力を増幅させるこはできないのさ。見つめられれば見つめられるほど僕の魅力はどんどん増えていく……違うかい?」
「その通りですわ、うまや様〜」
 酔ったように宙を見つめながら言葉を紡ぐうまやに、頬を赤くしたうさみが同意します。
「…………う、うさみは?」
 その2人の様子を見たくないと言うように、横を向いたぶたろうが、まだ答えていないうさみに聞きます。
「あたし? あたしはもちろん、うまや様の…………キャ―――っ!! 恥かしくて言えないわっ!!」
 うさみは、熱い眼差しでうまやを見つめたかと思うと、途中で言葉を切ってその場にしゃがみこんでしまいました。
 せっかく見ないようにしていたのに、視界の端に写ってしまった嫌なものを忘れようと、ぶたろうは2、3回頭を振ります。
そして、2人に背を向けた後、口を開きます。
「あ……ありがと。ぼく、ほかの人にも聞かなきゃいけないから、もう行くね」
「あぁ。頑張ってくれよ」
「キャ―――キャ―――……っ!!」
 うさみの黄色い声を背に受けながら、ぶたろうはその場からできるだけ急いで離れたのでした。








 次は、誰のところに行きましょうか?


 → うしお
 → すずよ








 参考 『明解!キャラクター紹介☆』