「うぅ…さむっ…」
窓から入り込む冷たい風に、目が冷めちゃった。
隣をみるとまだ夢の中にいるルーミィが、シロちゃんをギュッと抱きしめてた。夜のうちに跳ねられてたタオルケットを彼女にかけたわたしは、いつもより早かったけど服を変えて、ちょっと外に出てみることにした。
「あ、いい風」
ドアをあけたとたん、太陽に暖められる前の気持ちのいい風が通り抜けた。見上げれば、雲1つないさわやかな空色が広がってる。
わたしは胸いっぱいに空気を吸い込み、限界まで吐き出した。そうしたら、まだしっかりとは覚めてなかった頭がやっとすっきりした気がした。
もう一度空に目をやると、そこでは太陽が惜しみなく笑顔を振りまいてた。
「今日も暑くなりそうだなぁ…」
つぶやき声は、鳴き始めた蝉の声に混じって、吹いてきた風にとばされていった。
「パステル」
急に呼ばれて振り返ると、ドアのところにクレイがいた。
「早いね」
「朝の風の冷たさに起こされちゃったの」
わたしが肩をすくめてそう言うと、クレイは頷いてにこりと笑った。
「あぁ、最近朝晩冷えるよな」
「まだ、夏だけど…もうすぐ秋だなって気がするよね」
2人で笑いあって空を見ると、まだ少しだけ冷気をはらんだ風が、さあっと勢いよく駆け抜けていった。
「秋の風だね」
どちらともなく口にしたその言葉が宙に溶けて、夏の名残の暑さを少しだけ和らげてくれたような気がした。
- end -
2013-11-23
当時、日記代わりに使っていた「星片の記憶」にUPしたものです。
早朝に吹く風の冷たさを、ちょっと小説にしてみたかったようです。
屑深星夜 2005.8.28完成