「え〜っと……この辺、だよね?」
ざわざわとした人ごみの中、地図を片手に立ち往生をしているわたし。
「ぱーるぅ、だいじょうぶかぁ?」
「わんデシ?」
下から心配そうな視線を向けてくるシロちゃんとルーミィを見て、このまま自分で歩いていてもきっと目的の家につけないだろうなぁ……と思って、
「迷う前に聞いたほうが賢明よね。ちょっと誰かに聞こうか!」
と言うと、
「そうするおう!」
「わんデシ!」
と笑顔でうなずく2人。なんか、そういう風にはっきりと言われるのもマッパーとして悲しいんだけど、方向音痴で有名なわたしじゃしかたないか。はぁ……。
わたしパステル。パステル・G・キング。
今、わたしたちはリーザリオンに来てるの。冬だって言うのにすっごい人。エベリンより広いところなのに、あそこと同じくらい人口密度ありそうなくらい。
今日はね、おつかいのバイトをしてる途中なんだ。みんなそれぞれ自分のバイトにいそがしくって、ここに来てるのはわたしとルーミィとシロちゃんだけなの。
冬がはじまった頃は、わたし、小説の締め切りに追われてバイトしてなかったの。だからルーミィたちとお留守番しながら小説を書いてたわ。
それが終わったと思ったら、いきなりトラップがこう言うの。「お前ぇ、このバイトに行って来い!」って。
なんかね、内容にしては高いバイト料を払ってくれるけど、それに雇ってもらえる人は何かの条件を満たさなきゃやらせてくれないって噂のバイトらしいんだけど、だめでもともとでパーティ全員分の名前と簡単なプロフィールを書いて申し込んでおいたんだって。あ、ルーミィは除く全員よ!
楽に儲けられるほうがいいからって、トラップ勝手にやっちゃうんだもん。楽してお金がもらえる仕事なんてないのにね!
それで、なんかわたし、条件にあっちゃったらしくって、ぜひ引き受けて欲しいって依頼主から直接手紙が届いたの。
それが……1週間前かな?
連絡をもらってからすぐにシルバーリーブから歩いて半日くらいの所にあるその人の家に向かったわ。
依頼主は、豪華とはいえないけど古くて大きな落ち着いた雰囲気の洋館に住む、ロゼア・K・アストレアという名前の60歳くらいの女の人。長めの白髪を頭の下の方でおだんごにして、ふんわりと微笑む静かな女性で、訪れたわたしに椅子を勧めると、ときおり遠くを見つめ、何かを思い出しながら依頼内容を話し始めた。
***
「パステルさん、あなたへの依頼と言うのは……リーザリオンのこの住所に住むわたくしの孫に、この手紙と小包を届けて欲しいということなの」
ロゼアさんは住所が書かれたメモと手紙と小包をわたしに渡すと、一瞬消えるいるように目を細めると、もう一度口を開いた。
「……少し、昔話を聞いていただいてもいいかしら?」
「はい。あ、でも……」
うなずいてからふとルーミィ達がこの家にある大きなお庭で遊んでることを思い出して窓の外をみると、
「この庭には危ないものは置いてはありませんので、あの子たちのことは心配なされなくても大丈夫ですよ」
安心してください、とやさしく微笑むロゼアさん。
あ……この顔、お母さんがよくわたしに向けてくれた笑顔だ。わたしが心配そうにしているといつも見せてくれた表情。あったかくって、それを見るだけでとっても落ち着けるんだよね。
それならゆっくりロゼアさんの話を聞けると思って、
「いい聞き手でいられるかはわからないですけど、どうぞお話ください」
こう伝えると、ありがとうと言ってロゼアさんはゆっくりとその話をはじめた。
「……わたくしにはね、とても大切に育てていたひとり娘がいたの。エシュールというのですけれど、その子はいつしか大きくなり、古美術品を集めて売る仕事をしていたある方の妻となりました。何年かして、娘にもわたくしと同じようにひとりの可愛い娘ができ、世界を旅するその父親を待ちながら、3人でこの館で暮らしておりました」
彼女はなつかしそうに部屋全体を見回し、また視線をわたしに戻すと再び口を開く。
「エシュールの娘、ミルカーナが5つになった頃でしたか。娘は夫の仕事についてミルカーナを頼みますとわたくしに言って家を出て行きました。そしてその旅の途中、2人は事故に遭い、2度とこの家には戻って来ませんでした」
そう言うと、痛々しい表情を隠すように下を向いたロゼアさん。わたしは何も言うことも出来ず、ただじっと、長い沈黙の中で待つしかなかったわ。
その時、外で遊んでいるルーミィとシロちゃんの笑い声が部屋に届いた。はっとするように2人して外を見て、どちらからともなくクスッと笑いをもらす。
「……何よりも愛していた娘を亡くし、わたくしは、ミルカーナを危険な目に遭わせてエシュールのように、自分よりも先に……自分の目の届かぬ場所で命を落として欲しくないとただそう思っていましたの。あの子のことも考えず、この家から出さず、ひと時も自分の側から離しませんでした」
外を見たまま話を続けていたロゼアさんは、視線をゆっくりと室内にうつし、軽く肩をすくめた。
「でも、ミルカーナはずっと、ずっと外へ出たいと思っていたの。わたくしがここに閉じ込めていたから尚更でしょうけれど……毎日のようにけんかしていました。その頃のわたしはまだエシュールを亡くしたことから立ち直っていませんでしたし、決して自分の考えを変えようとはせず、ただ、自分の我儘のためにあの子の気持ちを押さえつけていたのです」
あ、れ? ロゼアさんの顔、ちょっと青白くないかな? さっきまではちゃんと肌色って感じだったのに……。
心の中で首をかしげながら、少し長く取られた間に居心地の悪さを感じだわたし。そうやってじっとロゼアさんを見てたのを、どうも続きを早く話して欲しいって言ってると思ったみたいで、彼女はふふっと青色の瞳を細めて笑うと先を続けてくれた。
(あ、もちろん、続きを知りたくないってわけじゃないからね!)
「あの子が16になった時、わたくしの気持ちは少し落ち着いてきておりました。でも、何年も長い間張りつづけていた意地を今更へし折ることもできませんでした。そうしているうちに、ミルカーナはこの家を出てしまいました。……後に知ったことですけれど、彼女は冒険者となり、同じ職の男と結婚しました。今ではあの子も2児の母です。冒険者もやめて、家族でリーザリオンに住んでいるみたいなの」
自分のことのように嬉しそうにミルカーナさんのことを話しているロゼアさん。
本当にもう気持ちは落ち着いたんだ。そう思ってほっとしていたら、彼女、急に顔をひきしめて真剣なその深い色の瞳でわたしを見つめたの。
「……ずっと、ね。あの子がこの家を出て、独りになってからずっと、謝りたいと思っていたの。自分のためだけに大事に思う孫を家に縛り付けて、好きなこともさせてやらなかった」
遠い、ここじゃないどこかを見ているような目をしたロゼアさんが、ふわりと消えそうな印象を与える笑みをみせる。
「だけど、あの子を愛していなかったわけじゃない。エシュールと同じくらい……いえ、それ以上にミルカーナを愛しているんです。謝っても許してもらえるとは思っていませんけれど、どうしてもそうしたかった。けれど、自分からそうする勇気はわたくしにはありませんでした」
彼女は静かに儚げな表情をしてゆっくりと外の様子を見た。どこか愛しさを感じるような微妙な瞳がすごく痛々しくて、やっぱりわたしは何も言えずにロゼアさんを見ることしかできなかった。
うぅ…何か気のきいた言葉でもかけてあげられればいいのになぁ……。さっきからひと言も話してないよ、わたし。
目線だけうろうろさせながらそう考えていると、
『ぱーるぅ! おっきなとりさんがとんでるおう!』
と、窓1つ隔てた向こうから無邪気なルーミィの声が聞こえた。もう半分条件反射でそっちを見ちゃうわたし。ロゼアさんもいつものやさしい笑みに戻ると、同じように外 ――― 空を見る。
高い場所で円を書くように飛んでいる鳥の影にしばらく全員の注意が向く。
地上にいるわたしたちを高いところから見下ろし、境界線のない広い空を自由に行き来できる、そんな鳥がうらやましい……。
……この家に閉じ込められていたミルカーナさんもそう思ったのかな? ふとそう考えて思わず首をかしげげそうになった時、わたしは自分に注がれる視線に気づいた。
真摯な深い青色の瞳がにこりと語りかける。
「その手紙にはあの子への謝罪の言葉が書かれているの。本当は人に頼むようなことではないのですけれど、どうぞミルカーナに、わたくしの想いを届けてください」
***
……というわけで冒頭に繋がるの。
今わたしは、ちゃんとミルカーナさんの家まで迷わず行けるように道を人に聞いてるんだ。
「ありがとうございました!」
わたしは道を教えてもらった人のよさそうなおじいさんに頭を下げ、ロゼアさんの想いを届けるために、目的の家……ミルカーナさんの住む家のある方に身体を向けた。
えっと……そこの角を曲がって、右側4番目の家ね。
ルーミィの手を取って、わたしはその家のドアの前に立った。こじんまりとして、周りの家とあまり変わらない一軒家だったけど、中から暖かい声が聞こえてくる。
木製のドアを軽くノックすると、中から元気のいい返事が2つ返って来た。
「あの! お届けもです!!」
少し大きな声で部屋に聞こえるようにそう言うと、目元がどことなくロゼアさんに似た、茶色の髪をポニーテールにした女の人が顔をだした。
「ミルカーナさんでいらっしゃいますか?」
「はい、そうですが」
親しみの持てるいい笑顔でそう答える彼女に
「あなたのおばあさま、ロゼア・K・アストレアさんから依頼を受けて、これをお届けにあがりました」
と告げると、びくっと一瞬動きを止める。わたしもルーミィも、そして、もう1つの声の主……ルーミィくらいの年の女の子もそんな彼女を不思議そうに見つめてしまう。
さっきまであんなに笑顔がきれいだったのに……。やっぱり、仲が悪かったから……? もしかして、受け取ってくれなかったらどうしよう……?
そんな考えが頭に浮かんでドキドキしながら彼女の返事を待っていると、
「どうぞお入りください」
と言ってぎこちなく微笑み、わたしたちを中へ入れてくれた。
家の中はきれいに整頓され、所々に植物が置かれている。真ん中に置かれたテーブルの上には両手で抱えると丁度いいくらいのかごが置いてあり、イスが3つあった。
「座ってください。今お茶を用意しますから……」
その言葉に甘えて静かにイスをひいて腰掛けようとした時、かごの中にいた赤ちゃんと目が合った。
「わぁ! 可愛いですね! 男の子ですか? 女の子ですか?」
「男の子よ。元気がよすぎてよくまわりのものを蹴飛ばすのよ」
くすくすとお茶をこちらへ持ってきつつ笑うミルカーナさん。
「ローア。お母さんね、このお姉さんとお話があるから、しばらく向こうのお部屋で遊んでてくれる?」
「はあい!」
「……よかったらその子も一緒にどうですか? ローアも1人じゃつまんないわよね?」
ローアちゃんはお母さんのその言葉に恥ずかしそうにうなずく。彼女の視線はルーミィに釘付けで……どうもルーミィが気になるみたい。それに気づいたルーミィは、
「ぱーるぅ、ルーミィもいっしょにあそんでもいいんかぁ?」
そう言ってわたしの服をつんつんと引っ張る。
「ミルカーナさんもいいって言ってるから、行って来ていいわよ。ローアちゃんと仲良くね!」
「わぁい! シロちゃんもいくおう!」
「わんデシ!」
わたしが微笑みかけると、ルーミィは満面に笑みを浮かべてシロちゃんとローアちゃんと一緒に隣の部屋に走って行った。
しばらくその様子を立ったまま見ていたわたしの前にお茶が置かれ、ハッとする。そこにはさっきまでの母親の表情をしたミルカーナさんじゃなく、ロゼアさんの孫としての彼女がいた。そんな彼女にロゼアさんからの包みと手紙を渡して、わたしはさっき座りかけたイスに座る。
ミルカーナさんはまず最初に包みを開けて、ノートのようになった厚い本をペラペラとめくる。そのうちに彼女の表情がなんともいえない苦しそうな顔になって……途中でそれを閉じ、急いで手紙の封を切った。
包みの中身が少し気になりながらも、ミルカーナさんの様子を見ていると、ゆっくりと彼女の目から涙がこぼれ落ちた。後から後から流れているその涙は、暖かいけどさみしい色をしていた。
「……届けてもらってありがとうございました」
「いえ……」
しばらくして落ち着いたミルカーナさん。彼女は、どこか真剣みを帯びた顔でわたしに聞く。
「祖母からあたしたちのことを聞きましたか……?」
わたしがそれに大人しくうなずくと、彼女は考え込むように少し遠くを見つめる。そのしぐさがロゼアさんと似ていて、わたしは、やっぱり血が繋がっているんだなぁとあらためて感じた。
「……あの人も、あたしと同じだったんですね」
「えっ?」
“同じ”というのがどういうことなのかわからなくて聞き返すと、彼女が苦笑する。
「今までずっと意地を張っていて思い出さないようにしていたんだけどね、あたし、小さい頃、祖母のことがすごく大好きだったの。母が死んだことを知った夜、あの人が静かに声を立てないで泣いていた姿を見て、子供心にどれだけ祖母が母のことを愛していたのか知ったわ。そして、愛ゆえにあたしを守ろうとしてくれていたのも……」
言いながら今にも泣きそうな顔をするミルカーナさん。こっちまで悲しくなってくるような表情で彼女は後を続ける。
「でも、あたしはそれに気づかないふりをして、ずっとなりたかった冒険者になりました。……あの時は、ケンカしてでも夢を叶えたかったんです。でも、だんだん年をとって子供が生まれ……あらためてあの人の気持ちがわかってきました。だけど、張り続けた意地をそんなに簡単にほどくこともできなくて、ずっとケンカしたまま今になりました」
ロゼアさんと同じようなことを語るミルカーナさん。彼女の表情もあの人と変わらない、痛々しい、深い青の瞳が印象的な微笑み。
「昔のように仲良く一緒に笑い合いたい。祖母もそう思ってくれてたんですね。考えてみれば、ただ頭を下げるだけのことですむのに、今の今まで言い出せなかった……。なんでこんな長い間、意地を張っていたんだろう?」
2人とも同じ気持ちだったのに、ほんの少し余裕がなくて自分の気持ちを優先しちゃって、お互いを思ってたのに、ちょっとのことですれ違っちゃってたんだ。そう思ったらすごくこの2人をなんとかしてあげたいって思って、わたしが言う。
「あの! ぜひロゼアさんに会いに行ってあげてください! わたしもこれから彼女に所に戻りますし……よかったら一緒に行きませんか?」
突然何を言い出すのか、と思ったのか、少し目を見開くミルカーナさんにあわてて頭を下げる。
「あ、勝手なことを言ってしまってすみません。でも、ロゼアさんずっとあなたに会いたがっていたみたいだったので……」
余計なこと言っちゃったかな……?
言いながら心配になってきてだんだんうつむいてくわたし。しばらくミルカーナさんを見ることも出来ずにいると、
「……夫と相談しなきゃわからないけど、よければ一緒に行ってもいいですか?」
こう、やさしい彼女の声が耳に入ってきた。思わずばっと顔をあげたわたしの視線が微笑んでいる彼女の瞳にぶつかる。なんともいえずうれしくなったわたしは、負けないくらい笑って思いっきりうなずいた。
***
それからわたしは、ミルカーナさんと2人のお子さん、ルーミィとシロちゃんでロゼアさんのお宅に向かったんだけど、そこで待ってたのは信じられない事実だった。
なんと、ロゼアさんは2ヵ月も前に亡くなっていたの!!
ヒールニントに住むロゼアさんの友人が時々家に風を通しに来てくれてて、偶然帰った日にその人に会ってそのことを知ったの。
実は、わたしが依頼を受けに彼女の家を訪れた時も、ホントはカギも開いてないはずだったんだって。だって、カギは必ず友人さんが持ってて、その日はこの家に来てなかったって言うんだもん。
それを聞いたときはすっごく怖かった! 怖かったんだけど……今思うとね、ミルカーナさんとずっと仲直りしたいと思ってたロゼアさんが、自分では伝えられなかった思いを誰かに届けてもらうために、亡くなってからもここで待ってたのかな? って思うんだ。
ミルカーナさんね、旦那さんと相談してこの家に住むことに決めたみたい。おばあさんとお母さん、そして自分が育ったこの家で、家族仲良く暮らすんだって。
……えっ? わたしの報酬はどうなったかって?
それは……ロゼアさんの部屋の机の上に置いてあった、わたし宛の手紙の中に入ってたわ。小さいけど真っ赤なルビーが3つもついた金のネックレス。自分にはもう必要ないものだから報酬になるかわからないけどもらって、って手紙に書いてあったわ。
あ、そう! その手紙!! 中にね、驚くようなことが書いてあったの。
パステル・G・キング様
まずあなたに謝っておきます。
ごめんなさいね、こんな手紙を残しておいて。
でも、この手紙をあなたが読んでいると言うことはわたしの依頼を果たしてくれたということ。
こんなおばあちゃんのわがままを聞いてくれて本当にありがとう。
報酬になるかはわからないけれど、ネックレスを同封しておきます。
わたくしにはもう必要のないものだから、どうぞもらってやってちょうだい。
……こうやってわたくしが手紙を書いているのは、あなたにお礼を言いたかったからというのもあるけれど、もう1つ伝えたいことがあったからなの。
あなたにだって心に何かひっかかっていて譲ることのできないことがあると思うわ。
でも、わたくしとミルカーナのようになる前に、少しだけ考えてあげてほしいの。
あなたのおばあさまのことを。
おばあさまはきっとあなたのことを愛してくれているわ。
でも、1度決めてしまった態度を崩すことが出来ずにあなたを傷つけてしまったの。
今すぐにとまでは言わないわ。
でもね、いつか後悔する前に1度だけでいいから会いに行ってあげて。
どうして知ってるのかって驚いているかしら?
わたくしの依頼を受けたいと願い出があった時に調べさせてもらったの。
この依頼を受ける資格があるか……わたくしと孫との関係に似ているかどうか知るために。
もう、わたくしたちのようなすれ違ってしまった家族を見たくなかった。
少しでもその家族の助けになればと思って、そうしようと思ったのよ。
余計なお世話よね? ただのわたくしの自己満足よね?
でも、お願い。わたしのこのメッセージをあなたの心の隅に残しておいて。
本当にありがとう。
そして……ごめんなさい、パステル。
ロゼア・K・アストレア
***
……2ヵ月も前に亡くなっていたはずのロゼアさんが、いつ、どこでこんな手紙を書いたのか知ってる人はどこにもいない。でも、彼女のメッセージはわたしの心の中に確実に刻まれた。
わたしも、もう子供じゃない。まだ幼いところもあるけど、昔よりは大人になったと思う。だからね、おばあさまの気持ちもわからなくはないの。
だけど、まだ……もう少しだけ待って欲しいの。
わたし、今はまだ、あの時……お母さんとお父さんが死んだ後、おばあさまの家に行った時に味わった悔しさを忘れられない。……一生忘れることはないかもしれない。
でも、あの人の悲しさもわかるようになってきたの。
今はだめだけど、きっと、きっと会いに行くから。
わたし、あなたからのメッセージ、決して忘れません。だから安心してください。いつかきっと必ず……。
- end -
2013-11-23
パステルの過去に関係させた話を書きたい…と思って書いた作品です。
読んだ後に、何か心に残っていたら嬉しいです。
屑深星夜 2001.7.21完成(2013.11.16修正)