もったいない

もったいない


「はい、これ」
 そう言って渡されたのは、手のひらサイズの赤い包み。おれは、金色のリボンがかかったそれを見つめる。
「……一応、それ、特別だからね!」
 顔を真っ赤にしてそう言ったあいつは、金髪を風になびかせながら自分の部屋に走って戻っちまった。
 これ、なんだ? 今日…なんか特別なことあったか?
 今さっきまで部屋で眠ってて、出てきたところで声をかけられたもんだから、いまいち状況がよくわかってねぇ…。
 ……とりあえず、中身を見てみっか。
 おれは、もう一度部屋に戻って、中身を確認することにした。

 ガサゴソと包みを開け、正方形の平たい箱のふたを開けると、そこには小さなハート型のチョコレートがちょこんと収まってた。
 あわててカレンダーを見ると、今日は2月14日。バレンタインデーだった。

「特別って……まさか……?」
 おれは、真っ赤な顔でそう言ったあいつの顔を思い浮かべる。
 知らず、笑みが湧いてくる。
 おれは、そのチョコレートを丁寧にもとの形に戻すと、枕元に大事に置いた。
「トラップ、起きてるか? 昼飯食べにいくぞ」
 そこに、ガチャリとドアをあけてクレイがやってきた。
「おう!」
「なんかうれしそうだな、トラップ。なんかいいことでもあったのか?」
 返事をしてドアの方へ近寄ると、そうクレイが聞いてくる。
「へへっ…内緒だよ、内緒!」
 おれは、笑ってそう答えた。

 もったいなくて言えるかってんだ!

- end -

2013-11-23

Little Star」のめぐ様と絵茶した折のイラストから生まれた作品です。

短いですが、どうしても文章をつけたくなってしまいました!

その時のイラストはこちらです〜。


屑深星夜 2005.6.4完成(2013.11.23修正)