白鷺物語 6

6.雨の日の授業で


 雨がシャワーのように降り続くある日。シラサギのクラスは魔法実習のために校庭へ出た。

 クラス20名が余裕を持って入ることのできる屋根の下に集まったシラサギたちは、この授業の担当教師であるチェインをマジマジと見つめていた。
 ニコニコと美しい笑みを見せるチェインは、20代半ばほどに見える。が、それが本当の年齢かどうか知る者はこの魔法学校の中にはいなかった。
 なぜなら、このチェイン。1日として同じ姿をしていることがないのだ。
 あるときは老婆。またあるときは成人した女性。またまたあるときは生徒と同じくらいの少女…だったりする。
 その上、年齢だけではない。本当のところ、彼女が女性なのかすらもわからなかった。
 この屋根も、元はチェインが懐から取り出した1枚のハンカチである。使い魔であるカメレオンの力を借り、生徒たちの前で大きく天に広げ、屋根としたのだった。
「それでは、今日はこの雨をそれぞれの想像力を活かして色々な物に変化させてみましょう」
 小鳥のような高い声でそう告げた彼女の指名により、生徒たちは1人ずつ前に出て魔法の練習をはじめた。
 もちろん、魔法学校に通っている最中なのだから、生徒たちはまだまだ勉強中の身。雨粒の勢いを増しただけの者や雨を止めてしまった者、雨の色だけが変化した者など。上手く魔法が使えずに失敗する者が3分の2ほどだ。
 しかし、残りの3分の1は見事、雨を色々な物に変化させることに成功した。
 例えば、飴玉やリンゴ、カエルやスコーンなどなど。生徒たちの表情もそれに合わせて変化して、授業は盛り上がりを見せていた。
「最後はシラサギさん。やってみて」
 呼ばれて頷いたシラサギは、肩に止まったカラスを見た後、魔法を唱えはじめる。
「我が名はシラサギ、使い魔の名はオプシディアン=カラス。我が身に宿る魔法の力よ、右手の証より現れいでよ!!」
 澄んだ声が右手の紋章に響き渡り、そこから生まれい出た魔法の力が周囲に向かって放たれる。

 瞬間、ヒラヒラと白い物が舞いはじめた。

 雨の代わりに大地に降り注ぐそれは、ひんやりした空気を纏った雪であった。
「変化の魔法としては少しレベルは低いですが、水の変化の基本ですね。もう少し想像力を養えばきっと素敵な変化魔法が使えるようになりますよ」
「はーい」
 ペロリと舌を出すシラサギに微笑んだ彼女は、フゥ…と己の手に浮かぶ魔法陣に息を吹きかける。

 ブワッ!!!

 突風のような力がそこを中心に広がり、シラサギたちは思わず目を閉じた。

 次に目を開けたときには、さっきまで降っていた雪は白い白い羽根に変わっていたのだった。

- continue -

2013-11-23

縛りSSったー」を使用したシリーズです。

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ryu__raは「シャワー」「雪」「スコーン」に関わる、「一次創作」のSSを5ツイート以内で書きなさい。
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5ツイート=700文字で挑戦しましたが、こちらには文字数縛りなしのものをUPしております。


屑深星夜 2010.8.2完成