銀の刃を光らせて敵と相対する蒼夜は、雪牙に彼との出会いの日を思い出させる。
あの雪深い森の中の静かで冷たい空気と同じ温度を纏う蒼夜に、雪牙はブルリと震えた。
それは恐怖のようでいて、全く別のもの。
沸き上がる感情は、雪牙の頬に笑みを刻ませる。
冬にしか生まれることの叶わない白い花びら。寒さの中でしか存在できない雪……己の名と同じもの。
主の傍におれば心配ない。我は、ずっと“生きて”いられる。
キラキラと光るその瞳には、今、あるはずのない雪が舞っているよう。
『もうお前は要らない』そう言われたとしても、きっともう離れられはしない。この空気を知ってしまえば、それ以外のどこにも己の居場所はないとさえ思えた。
雪牙はもう決めてしまっていたのだ。この男に何処までもついて行く、と。……例えその行き先が地獄だとしても。
「行くぞ、雪牙!」
「はいっ!」
ただ、隣で。
誰よりも何よりも大切な主と共に逝くために。
- end -
2014-6-10
11月22日は「小雪(しょうせつ)の日」ということで。
「雨色デイズ」様のキャラをお借りしてSSSを書かせていただきました。
この2人…好きなんですよね!
少しでも彼らの雰囲気が出せていたらよいのですが……。
屑深星夜 2013.11.22完成