アレで、まだ1ヶ月も経ってないって?
雪牙から蒼夜と旅をするようになった経緯を聞き出したレイヴは、彼らとの出会いの日に見た光景を思い出す。
この“わんこ”の具合がよくなかったとはいえ、癒依と自分に向けるものとは全く違う優しい眼差しは、長い付き合いがあるのだろうとレイヴに思わせたというのに。
大事なものに触れるように、柔らかに優しく雪牙の頭を撫でる指先。
包み込むような温かさの籠った声。
ご主人サマにとって“トクベツ”なのは確実なんだがな〜。
レイヴは、ポリポリと頭を掻きながら肩を竦める。
出会ったその日にも関わらず、己も癒依もそのことに気がついた。だが、蒼夜本人にその自覚がないようなのだ。
蒼夜は、今後のために力を持つものを探していた。「お前が必要だ」とまで言って癒依を得た以上、戦いは避けられないということ……。
俺たちが気付いたんだぜ? 敵さんがその“弱み”を利用しないわけがねーだろ。
いつか起こるかも知れない出来事を想像して溜め息を吐くしかない。
最悪の事態にならないよう忠告するのは簡単だ。けれど、自覚のない蒼夜はレイヴの言を聞き入れることはないだろう。
ならば、どうすべきか。
あー……わかったよ。壁になりゃいいんだろ、壁に。
主人と共に、その大事なものをも守る。
それが己の役割と定めたレイヴは、座っていた椅子から立ち上がり、蒼夜を探してひとり外に出ようとする雪牙について外へ出た。
全てを杞憂で済ませるために。
- end -
2015-4-29
「雨色デイズ」煉希様のお誕生日プレゼントに書かせていただきました!
オリジナルBL「霧華」に出てきた新キャラ…レイヴから見た、蒼夜と雪牙のお話でございます。
これありそう! と言って頂けて嬉しかったです♪
煉希様、お誕生日おめでとうございました!
屑深星夜 2015.2.1完成