昼休み。
形の良い唇に食まれ、口の中に消えていく赤い苺を見つめていたら、視線がかち合った。
「斎藤も食べる?」
「お、おぉ」
本当はそれほど食べたいわけではなかったが、反射的に頷くと、その白い指先で苺を摘まんだ三弥は廉冶の目の前に差し出した。
『はい、あーん』
…なんて、恋人がいる者なら一度は憧れるシチュエーション。
とはいえ、よっぽどの相手でなければわざわざそれに付き合うのも面倒な程度には、何度も経験済みな廉冶だ。
何も考えずにさっさと食べればよかったはずなのだが、そんなシチュエーションだと全くもって気づいていない三弥の様子に、廉冶の方が意識してしまい…。
「どうしたの? 斎藤」
口も開けられずに固まる廉冶に首を傾げる。
「顔赤いけど、もしかして調子悪い?」
ガタンと席を立ち、苺を持ってない方の手を伸ばしてくる彼に廉冶は小さく舌打ちする。
く…っそ! どうしてこいつは…。
決してその想いを表情には滲ませず、「大丈夫」と笑った廉冶は、三弥の手首を掴んで引き寄せる。
その細い腰にしっかりと手を回して見上げて見せれば、漸く三弥の頬が朱に染まる。
「な。それ、食べさせて?」
「う、うん……」
そっと唇に触れる赤い果実。
ゆっくりと見せつけるようにそれに歯を立て、数度租借した廉冶は、残った半分を指先ごと口に含んで舌を這わせる。
「さ、斎藤っ!」
「んー?」
逃げようとする手首を捕らえ、しっかりと指まで味わった廉冶は、耳まで真っ赤になった三弥にニヤリと笑む。
「ごちそうさん」
- end -
2014-6-10
1月15日は苺の日。
ということを、またまた「Guidepost」かなみ様の呟きで知りまして。
『苺』をお題に書かせていただいたSSSです。
オリジナルBLの廉冶君と三弥君をお借りいたしました。
「お仕事お疲れ様テロ」は成功したようでよかったです〜!
屑深星夜 2014.1.15完成