な、何で? どうして!?
さっきまで何ともなかったはずなのに、急に体温が上がり真っ赤になってしまった亜希は焦っていた。
学校からの帰り道。最近開店した洋菓子店に立ち寄ってケーキを買った2人は、有紀の部屋に入り込み、さっそくそれにありつこうと箱を開ける。有紀が家に常備されている冷たい麦茶をグラスに注いでいる間に、ケーキを皿に乗せる。
「「いっただっきまーす!」」
亜希がフォークでブドウの乗ったタルトをひと口分切っているうちに、ショートケーキを豪快に掬った有紀は大きな口の中に迎え入れる。
「んー…!! ウマい!!」
「うん! ほんとウマい!」
遅れた亜希も咀嚼したものを飲み込むなりに、目をキラキラさせながらそう言う。
そんな輝きを見てしまうと、相手の食べているものが気になるもので……。
「なぁ、アキ。俺のもやるからひと口ちょーだい」
「え? いいけど」
「やりぃ!」
はい、と皿ごと差し出そうとしたら、有紀は大きく開けた口を向けてくる。その姿が目に入れば、手は勝手にタルトを切り分けて彼の口に配給する。
「そっちもウマいな!」
ヘヘヘッと嬉しそうに笑いながら口をモグモグさせる有紀を見た瞬間、カァァっと己が熱くなるのを感じた。
な、何で? どうして!?
焦る様子に気付いていないのか。有紀は自分のケーキを掬って差し出してくる。
「はい、お返し」
しかし、真正面から顔を見れない亜希には口を開けることもできない。その様子を不思議そうに見ていた有紀は、辛うじて見える耳が赤く染まっていることに気付いて己がしたことに気がついた。
「うっわ! 俺、何の気なしにアーンしてもらってんじゃん!! もったいねーっ!!」
「なっ!?」
『アーン』とはっきり言われたことで、自分の体温が上がった理由をようやく理解した亜希は、同じように赤くなっている有紀の方を反射的に見てしまう。
「隙アリ!」
開いた口にショートケーキをねじ込まれて非難の目を向けたが、口に物が入っている状態では文句を言うこともできない。そんな亜希が咀嚼を始めたその時。
「あ、アキ。クリームついてる」
いきなり近づいてきた舌に口元を舐められて、ゴクリと嚥下したままに固まる亜希。有紀はそれに気づいた上でチュッと唇も奪っていく。
「ごちそーさんっ!」
- end -
2014-6-10
「Guidepost」のミム様のお誕生日祝いに書かせていただきました。
……いや、もう……大変遅くなってすみませんでした!!
リクエストは「ケーキを食べ合う的なほのぼのユキアキ」とのこと。
オリジナルBLの有紀君と亜希君をお借りいたしました!
お誕生日おめでとうございましたっ!
屑深星夜 2014.6.10完成