悪魔の涙1 エピローグ

悪魔の涙1 エピローグ


「……起きたか?」
 うっすらと瞼を開けた先で微笑む瞳にカァッと頬を染めたオレは、かかっていたシーツを頭から被って小さくなった。

 広いベッドの真ん中に、2人で寄り添うオレたち。一史の腕を枕にして、その胸の中で目覚めるなんてっ! 目覚めの瞬間にこれは、幸せすぎて刺激が強すぎる。…というか、恥かしすぎてたまらないのだがっ!!!
 昔のオレなら別になんとも思わなかっただろう。けれども、寝起きに好きな男の笑顔は……想像以上のダメージだった。

 一史が、身体を起こすついでにオレのシーツもはがして行ったため丸見えになり。仕方なくオレも起きようとしたら、
「…いっ」
ズキンと腰の奥が痛んで顔をしかめた。
「少し無茶をさせすぎたな」
 助け起こしながらもオレを見る顔はとても満足そうで。オレだけに昨日の余韻が残ってるのかと思えば自然と目が据わった。
「…お、まえ…ヤリすぎだろ………しかも、うまいし…」
 泣かされ過ぎたせいで声まで枯れて。少しの嫉妬も込めて最後の言葉を告げれば、肩を竦める。
「届かぬ想いを抱えてたからな。それなりの経験はした」
 その目からは、もう懐かしさしか感じられなかったが、過去に色々合ったと明かされればやはり面白くなく。自分のことは棚に上げて睨み上げる。
「……もう、オレだけのものだ…ぞ?」
「お前こそ…他の誰かに手を触れさせてみろ。どうなるかわかるな…?」
「…っ、あ……」
 ゾクリと快感が背筋を走り、僅かに仰け反った喉から声が漏れた。さっきまで爽やかだったくせに、昨夜のあれこれを思い出させるような妖しい瞳にいきなり変わるなんて……反則だ。
「……そんな顔すると、また襲うぞ」
 オレを抱き寄せて耳元で告げられた言葉は、ただオレを喜ばせるだけ。ニコリ、艶やかに笑ったオレは一史の首に手を回し……

 襲って…?

……言葉の変わりにキスをした。

- end -

2014-02-10

本編はこれにて終了です。
続きから、番外編3話〜。


屑深星夜 2011.5.14完成