私はおかしいのだろうか?
首筋に喰らいつく男の黒い頭を見下ろしながら、ゾクゾクとする感覚に微かに背を震わせる。
……身体が熱い。
体内の血が減っているのだ。行き過ぎれば貧血になり冷や汗が流れることもあると言うのに、この反応は全く反対のもの。それも……性的な、意味で。
舞蝶も男だ。性欲がないわけではない。仕事一筋で生きてきたこともあり、それに関する興味は薄い方かもしれないが、それでも年頃の時は、手っ取り早く発散するために春を売る店に行っていたし、そんな暇すらなければ自身で処理をしていたものだ。
しかし、それも盛りを過ぎたということなのか。誘われればもちろん、暇があれば自ら進んでそういう店に通っていたというのに、ここ2、3年は全く足を運んでおらず、自身で処理した数も最盛期の3分の1程まで減っていた。
そんな己が、血を吸われることで発情しているなど。
……いや、おかしいのはサンの方だろう?
恋人という関係になったはずの男は、それ以前とは打って変わって舞蝶の血を求めるようになった。が、それ以上は……ないのだ。
心を通わせてもう半年である。それなのにどうして。
恋人なら、その身体に触れたいと思うのが普通じゃないのか?
血を吸われる度に昂ぶってしまっているせいか、自身の中に答えがないにも関わらず、そう結論付けたくて仕方がない。
「ふぅ…あんがとな」
「…っ、サン!」
ハッとした時にはもう、子どもをあやすようにポンポンと頭を撫でて離れて行く体温を捕まえてしまっていた。
どうした? というサンの視線に一瞬言葉に詰まるが、もっと触れていて欲しいと言ったも同然の行動を無かったことにするには、時間が巻き戻らない限り無理である。
それに、いいかげん己の欲望を抑え込むことができなくなってきている舞蝶は、僅かに逡巡するも、震える唇をゆっくりと開いた。
「私たち……恋人同士、ですよね?」
「じゃねぇのか?」
「なら、どうして…っ!!」
「ボウズ?」
そこで口を噤んだ舞蝶の顔は、今までにないほど真っ赤になっていた。
それもそのはず。
『どうして、抱いてくれないのか』
…などと、女のようなことを言いそうになったのだ。相手がサンだからとはいえ、男としてのプライドを捨てるようなその言葉は、羞恥だけでなく舞蝶を染め上げた。
サンは貝のように口を引き結んで下を向く舞蝶の視線を追って、彼の身体の変化に気がついた。それによって恋人が口にできなかった言葉を完全ではないにしても理解して、考えなしの自分に苦笑してボリボリと頭を掻く。
「あー……悪ぃ。吸血行為はな、腹を満たしてくれるだけじゃねぇ。性欲も満たしてくれんだよ」
「え……?」
「つまり、血を吸うこと自体がセックスと同じっつー…」
直接的な言葉に耳まで赤くした舞蝶にサンは目を細める。その可愛さをもう少し眺めていたい気持ちもあったが、吸血鬼と人間の違いをすっかりと忘れて己ばかりが満たされていた罪悪感の方が強い今、沈黙は少々居心地が悪かった。
「……今日の所はこれで許してくれねぇか?」
舞蝶の目の前に見せられる右手は、先ほどまで舞蝶が捕らえていたもの。照れによって解放されたそれを上目遣いで見つめる瞳は真意を掴みかねているようで、サンはそんな彼にニヤリと笑って見せる。
「こいつで抜いてやろうかって言ってんだよ」
バチン! 顔面に落ちてくる手の平を避けずに受け止めて、痛みに顔を歪めながらもハハハッと声を上げて笑ったサンは、己から離れてようとする舞蝶の手を引き、お詫びの気持ちも込めて、まだ赤みの残る頬に唇を寄せたのだった。
それから2週間程、サンが血を求めてくることはなかった。
恋人の身体の調子が心配になる舞蝶だったが、「ちゃんと飯は食ってるし、こんくらい絶食のうちに入んねぇよ」と言われてしまえばどうすることもできない。故に、サンから部屋に来るよう誘われた今日まで、恋仲になる前に戻ったように、夕食と共にするだけで終わりという逢瀬を繰り返していた。
少し重い足どりついてくる舞蝶を気にすることなくサッサと自室へ入ったサンは、寝台に座ってその両手を大きく左右に広げて見せる。
『こいよ』
思わず聞こえた幻聴にドキリとした舞蝶は、今すぐにでも飛び込んで行きたくなった。が、恋人の意図を読み間違えてはいないかという不安から閉めたドアの前から動けずにいた。ゴクリと唾を飲み込んで喉を湿らせても、声が震えるのを止められない。
「な、んですか?」
「何って……ボウズの要望に応えるために血ぃ吸うの我慢してたってのに、ここでお預けはなしだぞ?」
己の予想が間違っていなかったことにホッとする前に、サンが自分のためにしてくれたことに胸が震え、また、この後交わすだろう行為を想像して一気に体温が上がる。しかし、耳に残る呼び方がどうしても引っかかって、素直に歩き出すことができなかった。
舞蝶は、少し首を傾けてジッとこちらを見つめてくる黒い瞳から、赤くなった顔を逸らしてモゴモゴと口を動かす。
「……ボウズは、嫌です……」
離れているにも関わらずしっかりとそれを聞き取ったらしい男は、手を広げた姿のままニヤリと笑う。
「舞蝶」
己だけを示す名に引き寄せられるように駆け出した舞蝶は、座ったままのサンにフワリと覆い被さる。漸く腕の中にやってきた彼をしっかりと抱きしめたサンは、見下ろす紫水晶の瞳が近づきながら瞼の裏に消えていくのを細めた視界の中で確認する。そして、その甘く柔らかい唇を静かに受け止めた。
「…は……んっ……」
チラチラと揺れる橙色の光の中に浮かぶ白い肌は、予想以上にサンを興奮させていた。荒い息に微かに混ざる甘い声はもちろん、クシャクシャになったシャツが辛うじて恋人の右手に引っかかっている様にも煽られたサンは、舞蝶の内腿に舌を這わせながら、血を吸いたい衝動と必死に戦っていた。
吸血鬼にとって性行為と同意であるそれは、興奮すればするほどに己の理性を揺さぶるものなのだと200年生きていて初めて知った。
それは、ただただ身体を繋ぎたいという欲求ばかりが強い年齢を大幅に超えてしまったからなのか。それとも、長いこと吸血行為を禁じて来たせいなのか……。はっきりとした理由がわかるはずもなかったが、とにかく口の中でとろけるように甘く感じる舞蝶の血を、味わいたくて堪らなかった。
「……?」
スッと身体を起こしたサンに潤み始めた視線を向けると、余裕のない笑みが返ってくる。
「くっそ…何でこうも血が欲しくてたまらねぇんだ……? 噛んじまいそうだ……」
「…いい、ですよ……?」
自分だから求めてくれるのだと。それほどまでに欲情してくれているのだと思えば、否定の言葉が出てくるはずがない。が、言った途端にペシリと額を叩かれて思わず目を閉じる。
「お前な……簡単に『いい』って言うんじゃねぇ。人が必死に我慢してるってのに……」
その言葉にそうかと気づく。舞蝶と身体を繋げるために暫し血を断ってくれていたのだ。まだ目的を完全に達したわけでもないのに、吸血行為で欲望を満たしてしまっては本末転倒だろう。
「まぁ、舐めてやれねぇのは残念だが、悦ばせる方法は他にもあるし…な」
「……ぁっ!」
ピン、と立ち上がった分身を指先で弾かれて上がる声。見下ろす男の唇がニヤリと笑むのがわかった。
「ちょっと冷てぇかもしんねぇが、我慢しろよ?」
既にベッドサイドに用意していたのだろう。透明なボトルを手に取ったサンは、手の平にジェル状の中身を取り出すと両手で揉むように温める。
しばらくその様子を見ていた舞蝶だったが、聞こえてくる濡れた音に気恥ずかしくなって顔を逸らす。と、クスリと笑う音が上から落ちてきて……ぬるりとしたものを纏った手の平が腹部を撫でた。
最初は、その濡れた感覚が少し気持ち悪く思えたのだが、単調だった動きが快感を引き出すものに変化すると、滑りがあることが逆に気持ち良くなっていく。
腹から脇へ、それが胸へと移動し、存在を主張している突起を指で弄ばれる。落ち着き始めていた息はまたすぐに上がり、滑ることで今までにない快感を得ているにも関わらず、もどかしさも感じて、もっと強い刺激が欲しくなる。
そんな舞蝶の変化がわかってなのか。スッと離れていった手を思わず目が追い、楽しそうなサンの瞳とかち合った。
「んな残念そうな顔すんなって。嫌だって言うまで弄り倒してやるから」
「サンっ!」
ジェルを足していたサンは、それを温めながら笑う。真っ赤になった舞蝶に再び伸びた手は、全身を隈なく撫で擦る。そして、少しでも反応する箇所があると、宝物でも見つけたかのように嬉しそうに目を輝かせ、暫しそこを攻め続け、舞蝶が乱れていく様子を楽しむのだ。
それでも、肝心なところには決して触れて来ない男に恨みがましい視線を向けるが、潤んだ瞳ではサンを楽しませるだけ。モゾモゾと下半身を揺らさずにはいられない舞蝶に、サンは知らぬ振りで問いかける。
「どうした?」
「…っ…わかっているのでしょう…?」
「何が?」
少し前まではあれほど欲情していたくせに、舌を使うことを止めた今は至極余裕があるように見えて、悔しさに唇がへの字に曲がる。
「……意地悪ですね…っ…」
「悪ぃ悪ぃ。けどよ、好きなやつほど苛めたくなるもんだろ?」
「…あ、んっ」
言いながらも動いていた手が、侘びのように潤滑剤でないもので濡れた雄を優しく握る。思わず上がった声が女のようで、舞蝶は己の口元を右手で覆うが、ゆるゆると上下に扱かれる度に堪え切れなかったものが漏れ出ていく。
「んんっ」
滑る指で裏筋を撫で上げられ、先をグリグリと押しつぶすようにされる。限界が近くなってきた舞蝶を更に追い上げるために硬いそれを手の平全体で下腹に押し付けたサンは、圧迫したまま擦るのだ。その上、別の手が先端に触れ、爪先で尿道を弄られて……。
「う、ん――…っ…!!」
ビクビクと震える分身の動きを押し付けられた腹で感じているうちに緊張が解け、はぁ…という息と共に舞蝶の身体から力が抜けた。
閉じていた眼を開けると、サンの色気のある笑みが映り込む。その上彼は、舞蝶が吐き出した白濁に濡れた指をこれ見よがしに舐め取って見せるのだ。一度絶頂を迎えて少し落ち着いた筈の熱が顔中に集まる。
「……私ばかり恥ずかしいのはずるいですっ」
「うわっ!」
起き上がった勢いのままにサンを押し倒したことで裸の胸が触れ合う。滑りを帯びた己の身体がサンの肌と擦れることで、再び舞蝶の内側に溜まっていく欲望。思わずそのまま己の快感を追いそうになるも、愛する者を自分の手で気持ち良くしたいという気持ちで抑え込み、サンの身体に指を這わせ、舌を伸ばす。
これまで抱いてきた女たちとは違う硬い筋肉に覆われた肌の感触も、伝わってくる体温も心地がよい。サンは自分ほど大きな感じ方はしていないようだが、時折ピクリと反応する場所を見つけると、嬉しくなって増々夢中になった。
舞蝶の身体から己の口を意識的に離すことで別の欲望を押し込めることに成功したサンは、なんとか落ち着きを取り戻していた。くすぐったいとしか思えない愛撫でも、一生懸命な舞蝶が可愛くて、彼の頭や髪、頬に触れながら甘んじて受け入れる。しかし、その手が盛り上がったズボンの合わせ部分に伸びた時、上半身を起こして止めに入った。
「無理しなくていい。男は初めてだろ?」
その言葉は舞蝶を気遣ってくれたものだろうが、サンは男を相手にするのが初めてではないという事実を逆に突き付けられて、黒で覆われた瞳をキッと睨みつける。
「私は貴方だからしたいんです。大人しくしていてください」
まだ止めたい気持ちもあるのだろう。困ったような…しかし、嬉しそうにも見える笑みを浮かべたサンは、それ以上は何も言わなかった。舞蝶はゆっくりと目の前にあるジッパーを下ろす。そして、十分な硬さにまで成長していた雄芯を取り出すと、まずは両手でそっとそれを包み込んだ。
自分のものではない男の性器に触れることになるなんて想像もしていなかった舞蝶だが、想う相手のものだからか。嫌悪感は全くなかった。寧ろ、相手を悦ばせることができるならば何だってできるとさえ思えてしまう。
右手を上下に何度か動かすと、微かに息を詰める音が耳に届く。左の指先でツーッと裏筋を擽れば、ピクリと腰が揺れた。
もっともっと。血を求めて興奮していた時のように、余裕たっぷりのサンを乱してやりたい。
そう思った舞蝶は、躊躇いなく猛ったそこに唇を当てた。
「お、い…っ…」
啄むようにキスを繰り返しながら根元まで下り、ペロリと舌で舐め上げる。と、先端からジワリと滲む透明な液が溢れて来る。そのままパクリと頬張って、口を窄めて吸い上げる。
初めてなのだ。女性にしてもらった時のことを思い出してやってはいるが、想像通りに行くわけもない。それでも、チラリと窺ったサンが唇を結んでいる様は快感に耐えているように見え、嬉しさに目だけで笑った舞蝶は更に舌を使っての愛撫を深める。
「あんま煽んじゃねぇよ。すぐにでも挿れたくなんだろうが」
「そんな余裕のない貴方が見たいんですから、止めませんよ?」
「……じゃあ、おれも好きにさせてもらう」
「え」
腰の辺りを引き寄せられた…と思えば、頭の向きを180度変えられていた舞蝶は、サンの顔を跨がされていた。
「こっちの準備はしといてやるから、好きなだけ煽ってくれていいぞ?」
「な……っ」
取らされた態勢とサンの言葉に赤くなっているうちに、新たにジェルを纏った指が後ろの蕾に触れてくる。
「んっ」
少しの違和感と圧迫感はあれど、滑りに助けられてか痛みはない。しかし、気持ち良いとは思えない舞蝶は、その感触を忘れるためにも自分の手と口を動かすことに意識を向ける。が、別の手に再び立ち上がりかけていた所を握られて、知らず入り込んだ指を締め付けてしまう。そこを、指1本ではあるが更に奥に押し込まれて息を詰めた。
「すぐに気持ちよくさせてやるって言いてぇが……ゆっくりな。痛い思いはさせたくねぇから」
前を擦られながら中を解すために手首を捩じられ、嫌悪感にも似た何ともいえない感覚が広がる。しかし、それを繰り返される度に身体は段々と熱を持っていく。舞蝶は、それに意識を持って行かれないよう目の前の雄に集中しようとしたが、腹側を探る指に前立腺に触れられて大きく身体が震えてしまう。
「ひっ、ぅ」
手も止まり、開いた口から洩れる声は自分の意思では止められない。
「増やすぞ」
一旦無くなった圧迫感が倍になって戻ってくる。今度は2本の指で広げられ、普段は感じることのない空気の冷たさゾワリとしたと思えば、感じる場所を攻められて無意識にそこを締めてしまっていた。
「ひぁっあ、ん!」
それ以上触って欲しくないと思える程の強烈な快感。だが、収縮する襞は自らサンの指先を引き寄せて、更なる波を連れてくる。自分でそれを断ち切る術を知らない舞蝶は、女のような嬌声を止めることができない。
「その声、もっと聞かせろよ」
「や…ぁあぅっ」
そうやって意識的に感じる場所を攻められてしまうと、もう舞蝶には、サンを愛撫する余裕などどこにもなかった。
『痛い思いはさせたくねぇから』
その言葉通りにするつもりなのだろう。サンは、自身が吐く息が段々と熱く…荒くなっていっても、舞蝶の後ろを解す手を止めようとはしなかった。
チュプリと淫猥な音を立てて抜かれた指に吐息が零れる。力の入らない身体を仰向けにされた舞蝶は、トロンとした瞳で覆い被さる男を見上げる。
「……挿れるぞ?」
思考の回らない頭では、彼が最初何を言っているのかがわからなかったが、足を開かされたところでシナプスが繋がって心音が高まる。興奮していることのわかるギラギラとした瞳に、サンも余裕がなくなっていることが見て取れた。にも関わらず、自分を気遣うことを忘れない男に、舞蝶は小さく頷いた。
ピタリと添えられるモノの硬さと熱さに微かに震える身体。恐怖よりも期待の方が強いそれに、サンの首に回していた手に力が入る。と同時に舌打ちが落ちてきて、指よりも太い塊がズブリと己を貫いた。
「ああぁっ! あ、ぅ!!」
「お前が、悪ぃんだからな…っ?」
突然の衝撃の後もサンの動きは止まらなかった。ジュプジュプと響く音に混じる自分のものとは思えない喘ぎ声に、耳からも犯されていく。
「サン…っ! サ、んぅっ」
呼ぶ声は合わせられた唇に吸い取られ、これまでほとんど活躍する場を与えられなかったサンの舌が口腔内で暴れる。腰の動きと同じように舌と舌を擦りつけられ、上あごを舐められて喉からくぐもった声が漏れる。
翻弄されてばかりであった舞蝶だったが、飲み切れない唾液が唇の端から零れ落ちる頃、自分の舌をサンの牙へと絡ませた。
「…っは! だから、煽んなって……」
「いいです…っ、から…」
もっと、もっと欲しがって欲しい。
もう、自分なしでは生きられないと思わせる程に。
「く、そ…っ…」
ドロリとした欲に塗れたことを願いながら、サンの頭を抱えるように首筋に引き寄せても、まだ血の誘惑に耐えているサンは、舞蝶の中にある弱い部分を抉る動きを早くするだけで、口をつけようとはしない。
「ぁあっ! そ、こは…っん、やぁ、ぁ、あん!!」
声が高くなればなる程に、耳元に届く息は早くなっていき……漸く舌が伸びてきた。
「だ、めだ……やめろ……!」
自分自身に言い聞かせるサンの叫びにも思える呟きを、霞む頭の隅で聞いた舞蝶は、意味のある言葉を発せなくなった口で、すぐそこにあったサンの耳朶をカシリと噛む。
「っ!!」
ブツリ
ついに突き立てられた牙の痛みすら、愛する者が己に与える愛撫の1つ。
互いに互いを満たし合った2人は、強く抱きしめ合いながら同時に果てた。
次の朝。
「もっと舞蝶様のお身体のことも考えて差し上げてくださいっ」
動けない舞蝶の世話を焼くモントの小言に、小さくなって肩を竦めるサンであったが、彼の顔に悪びれた様子はない。それにクスリと笑みを零せば、伸びてきた優しい手が頬に触れてくる。
その胸を温かくする感触を味わいながら、舞蝶はその紫水晶のような瞳をそっと閉じる。
この幸せがずっと続くように願いながら。
- continue -
2015-4-19
我が子、サンの23話目。
屑深星夜 2015.4.19完成