「……イ…セイ! 起きなさい!」
「う、ん……もう少し…寝かせ…て……」
「セイっ!!」
バサ…ッ!
寝返りをうったとたん、思いっきりシーツをはがされた。
「早く起きないと朝ご飯食べられなくなるよ、セイ」
もう少し…寝かせてって、いったのにぃ〜……。
そう思いつつ薄く目を開けると、眩しい朝の光と一緒によく見慣れた顔が見えた。
「ん――…ナナ、ミ……?」
「そう! 早く起きなさいって!!」
「……」
半分夢現のまま、ボクはベッドから体を起こした。
…あ、れ……いな…い?
いつも朝一番に見るはずの顔がそこになかったので、ボーっとした頭のまま、半ば無意識に部屋の中を見回した。でも、どれだけ見ても求める人の姿はなかった。
その間に、窓から入ってくる爽やかな風が少しずつ夢から現実へと連れ出していく。
「…目、覚めた?」
顔を覗き込まれながらそう聞かれたボクは、まだはっきりしない頭のせいもあって、正直な心を口にする。
「……シュウさんは?」
「急に話し合わなきゃいけないことが出来たって言って、もう広間にいるわよ」
「そうなんだ……」
そっか…そうだったんだ。じゃあ、しょうがないよね。ここに来れるはずないよね。
こう考えながら1つため息をついて…やっと気づいたんだ。ナナミがボクを起こしにきてくれてたことに。
「あ、ナナミ。おはよ」
「おはよ、セイ。ほら、早く着替えなさい」
「うん…」
いつもの調子でそう促され、ボクはまだ目を覚ましきってない身体を無理にベッドから下りさせた。すると…
「もー…セイったら、お姉ちゃんよりシュウさんに起こしてもらう方がいいのね」
突然、ナナミがそう言ったんだ。
「えっ?」
そんなこと言われるなんて思ってもみなかったボクは、寝巻きを脱ぐ手を止めた。ナナミのほうは、肩をすくめてボクに言う。
「だって、明らかに動くスピードが違うんだもの。シュウさんのときのが早いわ」
「……そうかなぁ?」
…同じような気がするんだけど……。
ボクが首をかしげると、ナナミは腰に手を当てて、びっと右手の人差し指を立てるんだ。
「そ・う・よ!」
…そうだったんだ? 気づかなかったなぁ〜…。
…これって、ナナミの言う通り、シュウさんに起こしてもらう方がいいって思ってるからなのかな? ボクは違う気がするんだけど……。
ナナミの時とシュウさんの時で着替える速さが違うんだったら、きっと、恥ずかしいからだと思うな。寝起きの恥ずかしい姿を長い間見せたくないからだって。
いろいろ考えながら、ボクは手早くいつもの服に着替える。
それで、どことなく寂しそうにこっちに背を向けてたナナミに言った。
「ごめんね、ナナミ」
すると、ナナミはこっちを向いてニコッと笑った。
「いいわよ、それくらい。それより準備できた?」
ボクはあわててスカーフを結んで、手早く寝癖のついた髪の毛を直し、ナナミに向かって頷いた。
「じゃ、行きましょ」
ボクは先に歩いていくナナミの後について、部屋を出た。
ご飯を食べたら会いに行こう。ナナミには悪いけど…目を覚ましたとき、1番最初に会いたかった大好きなシュウさんに。
今日も難しい顔して仕事してるのかな?
……ボクが会いに行ったら、笑ってくれると…いいな。
- end -
2016-8-21
2000.11.18にUPしていたものを、今回修正しました。
それぞれが朝、目覚めたときの物語です。
『1日の始まり』シリーズになっております。
このほかに、葛、シュウ(表)、シュウ(裏)、ティセ、ミオ、ユウトのバージョンがあります。
屑深星夜 2008.5.17に修正(2016.8.21修正)