シトシトシトシト……
はーぁぁ……
自分の腕にあごを乗せながら、途切れることなく聞こえてくる音にため息をついた。
そっと目を開けて見た先は、窓の外。真っ暗なそこには、見えないけど静かに雨が降ってるの。
4、5日前から降りっぱなしの雨は、今日ももう終わる頃っていうのにまだまだやみそうにないわ。
人間だって猫だって、植物だって……みんなが生きていくためにお水が必要なのは知ってるけど、こう毎日雨ばかりじゃ、ため息もつきたくなるってものでしょ?
元々お水はあんまり好きじゃないし、外に行けないから1日中建物の中にいなきゃいけないわけじゃない。お昼寝するのがいくら好きでも、さすがに飽きてきちゃった……。
ご主人様もあたしが退屈してるのがわかるみたいで、散歩に行くかって聞いてくれたり、1人で遊べるおもちゃを用意してくれたりするんだけど、そんなのほんの一瞬だけの楽しみでしょ? すぐに興味なくしちゃって……。
あーあ……早く雨、やまないかしら?
ガチャリ
あっ!!
音に反応して身体を起こすと、開いた扉から主人様が入ってきたの。
夕方、アップルちゃんに呼ばれて慌しく部屋を出て行ったままだったから……6、7時間ぶりかしら? さすがにちょっと疲れたような顔をしてる。
ご主人様おかえりなさいっ!! 遅かったですね?
足元に擦り寄ると、
「あぁ、葛。遅くなってすまない」
と、少しホッとしたような表情で耳の後ろをくすぐって下さる。
気持ちよくて目を細めるてたら、ご主人様はスッと立ち上がってこう言うの。
「すぐに夕飯の準備をする」
ありがとうございますっ!!
手にしていた何枚かの書類を机に置いて、あたしのご飯の器を持ってカチャカチャと食事の準備をして下さるご主人様。
いつも思うんだけど、ピンと伸びた背筋がご主人様らしくてかっこいいわよね〜。
普段身体を鍛えることなんかほとんどしてないはずなのに、案外ガッチリした肩してて…男らしいところもあるのよ。でもでも! そんな肩をサラリと流れる黒髪がギャップを感じさせてドキッとするのよね! それを邪魔そうにかき上げたりなんかしちゃったら、もうっ!! すっごく色っぽくって堪らないのっ!!!
…なーんて、興奮しながらご主人様を見つめてたら、ふと気づいたの。
自分が今、全然退屈してないって。
さっきまで何をしててもあんなにつまんなかったのに、ご主人様が帰ってきてその姿をじーっと見てるだけでドキドキワクワクしちゃってる。
……そっか。大好きなご主人様がいるからだわ。
忙しい人だから、お部屋にいても一緒に遊んでもらえるわけじゃないわ。それでも、同じ部屋にいるだけで、何をするわけじゃなくても嬉しい。雨に閉じ込められたジメッとした中でも、気分が明るくなって楽しい!
側に、大好きなご主人様がいてくれるから……。
「ほら」
あっ! ありがとうございます♪
優しく頭を撫でてくれるご主人様の手に顔を寄せて、しっかりとその温もりを味わった後、用意してくださったご飯を食べ始めた。
ご主人様は机に座ると、持ち帰った書類に目を通して…ペンを走らせる。
あたしは、横目でその姿を見ながら雨の音に耳を澄ます。
シトシトシトシト……
ずーっとやむことなんてないんじゃないかって思えるほどの、規則的なその音。ちょっと前までは、それを聞いてるだけでため息をつきたくなるくらいだったのに…今は全然そんなことないの。
むしろ、とっても気持ちがいいくらい。
不思議よねぇ〜。ご主人様がいるだけで、こんなにも違うなんて。
雨は嫌い。
嫌いだけど……ご主人様が側にいてくれるなら、ずっと雨でもいいかもね?
- end -
2016-8-21
8.9の妄想会で考えた話。最近短いのばっかりですみません(苦笑)
絢辻同志からネタを得て、こんな感じで考えてみましたvv
ちょっと時期はずれではありますが、梅雨時期の話です。
ひっさびさの葛視点でわけがわからない状態ですが…彼女は書いてて楽しいです(笑)
次も葛ネタが続く…予定です。(予定は未定ですが(おい))
2009.8.27完成(2016.8.21修正)