仕えるならば
自分を操ることもできる
そんな力を持つ
気の抜けない ライバルのように思える者
と考えていた
自分を使うことのできる人間は、それ相応に学も才もあり忌憚なく意見を交わせるような者だ、と思ってきた。
だからこそ、そのような人物にお目にかかることもなく年を重ねた。
やっと出会ったのは、思い描くような者では決してなく。正反対といってもいい少年だった。
学はなく、戦略に関する知識は皆無と言ってもいい。
ただ、武道には優れ、人の心を惹きつける才だけはある。その健気でいつも真剣な態度は、人々に助けてあげたいと思わせ、あどけない笑顔を向けてもらえるならば、力の限り自分の才を使ってやろうという気にさせる。
皮肉にも、力を貸すに足る人物を待っていた動かぬ操り人形(俺)を動かしたのは、優秀な人形遣いではなかった。
セイは糸を握るでもなく、ただ、笑顔で見つめる。
だが、それが俺の原動力となり、彼のために望むようにしてやろうと自分から動いてしまう。
まるで螺子を巻くように、微笑み1つで全てに力を与えるのだ。
今、俺のいる現実は、決して想像していた未来ではない。
けれども、不思議なほどに後悔はない。
俺は、お前のために働く人形でいよう。
その笑顔を守るためなら、何でもしてみせよう。
ただ1人、主と認めたお前のためならば……。
仕えるならば
自分を操ることもできる
そんな力を持つ
気の抜けない ライバルのように思える者
と考えていた
けれども
心が主と認めたのは
糸を握ることすらできない 少年
人形を操ることのできない 人形遣い
少年は 代わりに笑顔で力を与える
螺子を巻かれた人形は
主のために 力を尽くす
- end -
2016-8-21
ユウトの話「祭の前に」とランドの話「幸せ感じて」と同じ日に下書きしたもの。
『螺子』をお題に考えてみました。
SSSというか…とっても短くなってしまいました(汗)
内容的には気に入ってますが、詩が…ちょっとしっくりこない(苦笑)
でも、これ以上悩んでもいいものは出てこないかなぁ、と妥協してしまいました。すみません。
文章ラストの5行。
***
今、俺のいる現実は、決して想像していた未来ではない。
けれども、不思議なほどに後悔はない。
ただ1人、主と認めるお前に出会えたのだから。
俺は、お前のために働く人形でいよう。
その手に勝利をもたらすためなら、何でもしてみせよう。
この命を投げ出すことすら、厭いはしない。
たとえ、その笑顔を奪うことになったとしても……。
***
なーんてバージョンも考えてました。
(下書きは本文と同じ内容ですが、清書していてふと思いついたんです…)
実は、以前『死生』という言葉から“火計”のシーンが書けるかも…とネタをメモしてたので、それを実現させるならこっちでもいいなと思ったんです。
しかし、セイのお話は永遠に戦争中(であってほしい)ですし、だからこそゲーム本筋に関わるようなシーンを今まで書いてきていないので…やめることにしました。
いやぁ…“火計”が物語の最初の方にあったとしたら実行してたかもですけど(笑)
終盤じゃないですか〜。戦争終わっちゃうじゃないですか〜。
…いや、それくらい気に入った文章だったんです(涙)
もしかして、いつか、その話を書く気になったとしたら、差し替えや修正をする可能性はあるかもです(おい)
2009.8.12完成(2016.8.21修正)